
みなさん、こんにちは。スマートエデュケーションの大澤です。
5月8日(木)に開催した「創造的環境とICT: レッジョエミリアに学ぶ、遊びの環境づくり」セミナーのレポートをお届けします!
今回は、子ども主体の保育を豊かにするための創造的な環境づくりとICTの活用という2つのキーワードを軸に、アトリエリスタの津田純佳さんと山形県天童市 つばさの森愛宕こども園の先生方に、実践事例をお話しいただきました。
豊な保育環境をつくるヒントが盛りだくさんの内容です。ぜひご覧ください!
↓ セミナー動画はこちらから。
レッジョ・エミリアに学ぶ遊びの環境づくり
アトリエリスタ/みりおらーれ代表 津田純佳氏
みりおらーれの活動紹介(2分40秒〜)
津田さんはイタリア レッジョ・エミリアにて約5年間、アトリエリスタとして活動されていました。現在は日本を拠点に、アトリエ活動を中心とした保育実践に取り組まれています。
イタリア滞在中、津田さんは日々素材や道具に向き合うなかで「これが日本の素材だったらどうなるかな」「日本の子どもたちとだったらどんな活動ができるかな」という思いを抱くことがあったという津田さん。帰国後は子どもたち・先生方と一緒に日本の美しさに触れる活動にも力を入れています。最近では、お茶室をアトリエと見立てた活動なども行っています。

レッジョ・エミリア・アプローチについて(6分48秒〜)
続いて
・レッジョ・エミリア市の歴史と文化
・レッジョ・エミリア・アプローチの成り立ちと哲学
・レッジョ・エミリア・アプローチの子ども観
・レッジョ・エミリア・アプローチにおける学びの環境
についてご紹介いただきました。
レッジョ・エミリア市はイタリアの三色国旗が生まれた伝統ある街です。第二次世界大戦中はレジスタンス運動が盛んであった地域でもあり、市民意識が強いことも特徴です。戦争への反省と平和を願う強い思いが、レッジョ・エミリア・アプローチの基盤となっています。
レッジョ・エミリア・アプローチでは「知識は大人が教え込むのではなく、子どもたちが主体的に構築していくもの」「学校は日常生活の中で子どもたちが知識を築き上げる場」だと考えられています。環境は「第三の先生」と呼ばれ、子どもたちに大きな影響を与える存在。レッジョ・エミリア市の園が実際にどのような空間作りや保育環境設定を行なっているのかもご紹介くださいました。
アトリエの役割とアトリエリスタの活動(24分45秒〜)
さて子どもたちの学びの環境において、非常に重要な役割を果たしているのがアトリエです。アトリエ=「作品を作る場所」というイメージがあるかもしれませんが、実はそんなことはありません。アトリエはさまざまな素材や道具を試したり、実験したり、研究したりする実験室・研究室のような部屋です。

アトリエで子どもたちの学びを支えているのがアトリエリスタです。津田さんは「アトリエリスタとは言葉ではない言葉で子どもたちの学びを支える人」だとよくお話しされるそうです。もちろん言語も使いますが、紙・光・粘土などの素材や感触や匂いなどの五感、嬉しさや驚き・不思議だなと思う気持ちや感情、そしてさまざまな関係性などを「言葉」としてとらえ、これらを使って子どもたちにさまざまな体験を提供するのがアトリエリスタの役割です。
もうひとつ、レッジョ・エミリア・アプローチにおいて欠かすことができない考え方に「参加」があります。社会への参加、地域への参加、そして政治への参加。その事例として教育哲学者のローリス・マラグッチの生誕百年記念イベントで行われた街全体を巻き込んだアートプロジェクトについてもご紹介いただきました。
子どもたちの言葉を知ることの重要性(32分04秒〜)
ローリス・マラグッツィは「子どもたちの100の言葉」という詩を残しています。この詩はレッジョ・エミリア・アプローチの大切な教育哲学となっています。この詩にあるように、子どもたちの手の表情、視線の先、聞こえる音、指先の動きなどのさまざまな言葉を通して、子どもたちの世界を知ること、子どもたちの学び方を知ることが重要であり、それが子どもたちの学びを支える環境づくりへとつながっていく、と津田さんはお話しされました。

なかでも重要なのが「美しさ」。知的好奇心を揺さぶる美しい環境を子どもたちに提供することの大切さについても語られました。
ICTを活用した学びの可能性(38分29秒〜)
ここからは、レッジョ・エミリア・アプローチにおけるICTを活用した学びの環境についてご紹介いただきました。レッジョ・エミリア・アプローチでは古くからデジタル機器を学びの道具として積極的に取り入れています。なぜICTを子どもたちに提案するのか?「それは子どもたちの豊な学びのため」と津田さんは語ります。
園では、マイクロスコープ・ウェブカメラ・モニター・プロジェクター・パソコン・プリンター・スピーカー・マイクなどいろいろなICT機器が道具として活用されています。
ICTはたくさんの視点を与えてくれる道具です。マイクロスコープを使えば、肉眼では見えない色や形を見ることができます。例えばこちらの画像。「炎みたい」「雷みたい」「手みたい」。いろんな考え方が出てきます。すべてが正解です。

またICT「異なるもの同士をつないでくれる」道具でもあります。本物と映像、現実と仮想、立体と平面をICTがつないでくれることで、子どもたちは豊かな空想の世界に入り込むことができます。
一方で注意しなくてはいけないこともあります。まずひとつ、PCやタブレットは画面が小さいこともあり「個人の活動になりやすい」という特徴があります。グループで活動したり、プロジェクターにつなげることで多くの子どもが見られるようにしたりするなど、学びを共有し、クラス全体の学びにつなげる機会を、意識して作ることが重要です。
そしてもうひとつ。ICTは人工物です。人工だから悪いということではないですが、自然との出会いを作ることも大切です。それぞれの素材や道具には特徴があり、その特徴を生かして学びに取り入れる視点を持つことが、豊な学びの環境づくりにつながります。

最後に津田さんは、ICTを使う使わないにかかわらず、すべての活動において、いろいろな素材や道具に実際に触れながら考えることが大切だとお話しされました。一人ひとりの子どもたちは違う言葉を持っていると知ること、お互いの言葉を尊重し、生かし合いながら学び合う姿勢を持ち続けることを津田さんご自身も実践していきたいと締めくくられました。
ボーダークロッシングス展の紹介(52分25秒〜)
さて、現在レッジョ・エミリアの国際展「ボーダークロッシングス」が日本国内を巡回中です。6月には奈良会場で開催されます。

奈良会場の展示にはスマートエデュケーションも協賛しており、会期中はKitSのアプリを活用したワークショップも開催されます。こちらは4〜6歳向けのお子様向けワークショップです。また7/10(木)にはワークショップの内容を解説するオンラインセミナーも実施します。
6/14(土)こども向けワークショップのお申し込みはこちら

7/10(木)オンラインセミナーのお申し込みはこちら

つばさの森愛宕こども園 実践事例紹介
園長 森谷千佳子先生・ 5歳児担任 熊谷茉優先生
レッジョ・エミリア・アプローチとの出会いと取り組み(54分55秒〜)
続いて保育実践事例のご紹介です。山形県天童市にあるつばさの森愛宕こども園。自然に囲まれた場所で130名程度の子どもたちが過ごしています。つばさの森愛宕こども園では、子どもたちの「やりたい」という気持ちに寄り添いながら、保育環境や活動内容が柔軟に変化する日々を大切にしています。
同園がレッジョ・エミリア・アプローチに出会ったのは、2017年。まずは廃材を使った造形活動に取り組むところから始めました。そこから廃材や素材をいつでも自由に使えるように工夫し、子ども主体で遊びが展開していく場づくりを進めていきました。

もうひとつ重要な役割を果たしているのがドキュメンテーションです。園では子ども主体の遊びの重要性を保護者に伝えるために、また、先生同士で活動や子どもたちの姿を共有するために、写真や言葉で子どもたちの育ちや学びを見える化しています。保育者自身の心が動いたときにその思いを必ず書くこと、またドキュメンテーションで伝える情景が子どもの学びやインスピレーション、楽しさがあふれる活動であることを重要視して、作成しています。
ドキュメンテーションは写真を切り貼りせず、背景や環境をそのまま見せることを意識しているそうです。
※以前のドキュメンテーション(子どもの姿を中心に、写真が丸く切り取られています)

※現在のドキュメンテーション(背景や環境がわかるような写真)

「職員同士がドキュメンテーションを見合い、園内での情報共有することで保育の質が向上したという園長の森谷先生。ドキュメンテーションは、日々の実践を次へつなげる力を持っていると感じているそうです。
ドキュメンテーションを続けるなかで、家庭とのつながりも強まっていきました。地域企業にも声をかけて廃材を集めるようになり、現在の造形活動やプロジェクト活動の大きな土台になっているそうです。
5歳児クラスでのICT活用
ここからは5歳児担任の熊谷先生が園でのICT活用について紹介してくださいました。
2年前の5歳児の間で洋服リメイクプロジェクトが盛り上がっていたことに影響を受け、昨年の5歳児ではリカちゃんの着せ替え遊びをする子どもたちがいたそうです。ティッシュにペンで色をつけるという簡単な洋服作りから始まり、徐々に布で洋服を作ることへと展開していきました。そのなかで写真を撮ってコラージュができるアプリに出会い、アプリを使って洋服をデザインする遊びが新たに始まりました。好きな写真を撮って自由に模様を作るというデジタルならではの表現を楽しんでいたという子どもたち。ICTと出会うことで活動の幅が広がり、遊びがさらに盛り上がっているところだそうです。

園ではICTは特別なものではなく、日常の中にある道具の一つとして使用しています。散歩に行った先で写真を撮り、後で見返して遊びを振り返ったり、写真を見て地図作りをしたり。子どもたち自身の遊びを深めたり、誰かに伝えたい気持ちを表現する手段として、タブレットがごく自然に使われています。

ICTとの出会いで子どもたちの探求が大きく変化したのが石研究所の活動です。石研究所は、ある子が園庭や公園で見つけたお気に入りの石をコレクションしていたことから始まりました。図鑑で調べたり、虫眼鏡で研究したりしていましたが、マイクロスコープを導入したことで遊びがさらに発展していきました。図鑑では載っていない拡大された世界や目に見えない世界が見えることで、子どもたちは大興奮!(大人も大興奮だったそうです)
そこから「石を削ってみたらどうなる?」「中には何かあるのかな?」「自分で図鑑を作りたい!」と、遊びがどんどん広がっていきました。道具があるからこそこれだけ多種多様な遊びが生まれたことを実感した、と熊谷先生は語られました。

石の魅力にハマったのは、子どもたちだけではありません。先生方も、今まで何気なく見ていた道端の石を見て不思議な色だな、不思議な形だなと感じるようになったり、休みの日に旅行先でたくさんの天然石を子どもたちのお土産に買ってきたり。子どもたちの興味関心が保育者や保護者にも広がって、自然と一緒に楽しむ流れがどんどん広がっていったそうです。
最後に熊谷先生は次のような言葉でお話を締めくくられました。「保育者自身が楽しんでいる姿は子どもたちにもしっかり伝わって、共感や一体感を生んでいくと感じています。『明日もまたやろうね』『また一緒にやりたいね』。そんな楽しい連鎖をこれからも大切にしていきたい。子どもたちの興味に寄り添いながら、大人も一緒にワクワクし続ける、そんな園でありたいと願っています」
つばさのもり愛宕こども園さんの取り組みについて、津田さんからもとても素敵なご感想をお話しいただきました!ぜひ動画をご覧ください!
Q&Aコーナー(1時間14分45秒〜)
質問:レッジョ・エミリア・アプローチでは光を使った活動が多いかなと思いますが、光を楽しむのに園の環境で気軽にできることがあれば、教えていただきたいです。
津田さん:光は「感情言語」と呼ばれる素材で、光の種類によって感情や気持ちに影響を与えます。例えば真っ赤な光の中にいると怒りや不安を感じたり、真っ青な光の中にいると涼しさや冷たさを感じたり。そんな特徴をもった素材です。保育への取り入れ方としては、もし窓があったら、太陽を光源として影を楽しんでいただきたいなと思います。そのなかでやはり大事なのが素材選びです。光と共にどんな素材を子どもたちに提案するか。光を通す素材・通さない素材、透明のものや穴があいたもの、光を反射するもの。子どもたちの日常の中にあるものから、子どもたちがいろいろな関係性に気づけるような素材を少しずつ提案するといいかなと思います。ぜひ0歳児さんから楽しんでみてください。
質問:ICTのデバイスやアプリは日進月歩で進化し続けていますが、園で新規導入する場合、どのような検討プロセスを踏めばよいでしょうか。
津田さん:まずは自分が試すことが大事だと思います。デジタルだけではなくいろいろな素材や道具についても、まずは自分が知っていると子どもたちに提案できるかなと思います。もうひとつは、使い方を教えるのではなく、デジタルを通してどんなことができるのかを子どもたちと一緒に発見することが大切です。こういう使い方が正しくてこれは間違っているということではなく、子どもたちと一緒に探求していただきたいです。
質問:0歳から2歳児の保育園でレッジョ・エミリア・アプローチを取り入れたいと思っています。海外での0歳から2歳児の活動はどんなことがありますか?また大切にしていることについても知りたいです。
津田さん:年齢問わず、素材との出会いやいろいろな表現を豊かにしていくことを大切にしています。特にレッジョでは「関係性」をいかに作っていくかがとても大事にされています。どの園でも1人で活動するということはなく、2人以上が最小のグループというふうに考えており、他者との関係性のなかで子どもたちの豊かな考えを育てていくことを意識しています。
あとは0歳から2歳児さんは視線が下になりがちなので、床面を使ったり、天井を使ったりして空間全体を美しくしてあげることが多いのも特徴的かなと思います。
公開保育のご案内(1時間22分39秒〜)
6月から9月にかけて全国8ヶ所で公開保育を実施します。ICTを使った子どもたちの遊びをぜひ実際にご覧ください!
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