公開保育

2026/2/9

〈公開保育レポート〉1/16 認定こども園 城山幼稚園(熊本)

 こんにちは。スマートエデュケーションの植村です。
 1月16日、熊本県熊本市の認定こども園城山幼稚園にて公開保育を実施しました。当日は鹿児島から青森まで、全国各地から多くの先生方にご参加いただきました!

 午前は0歳児から5歳児までのつながりのある保育や、アナログとデジタルを自由に選択する子どもたちの様子をご見学いただきました。午後は玉川大学 大豆生田先生や熊本市 遠藤教育長、城山幼稚園の先生方と対話をしながら、幼保小接続とICTの可能性をテーマとしたシンポジウムを開催しました。今回はそんな盛りだくさんの1日をレポートします!

 城山幼稚園では、2004年から「環境を通した保育」「主体的・自発的な学び」を重視する方針へ転換し、異年齢のチーム保育をしています。今年度の4月からはICTを導入し、1年足らずで子どもたちはハサミやクレヨンと同じように、自分を表現する一つの道具としてICTを活用するようになり自然と保育の中に溶け込んでいます。

【午前】保育見学

城山幼稚園を散策してみると・・・

 子どもたちが夢中になれるコーナーや遊びが生まれる環境が盛りだくさん!「環境を通した保育」がよく考えられている空間となっていました。

0・1歳児クラス

 2~5歳児はワンフロアになっています。可動式の棚で2歳児クラスと3~5歳児クラスが仕切られていますが、自由に交流できる空間となっていました。

2歳児クラス

2歳児コーナーの床には数字や長さに興味を持つ仕掛けもありました。

 3~5歳児クラスでは、日によってコーナーが変わり、子どもたちはボードを見れば今日はどのコーナーで遊べるのかわかるようになっています。

STEMコーナー
観察や実験など、遊びながら探究心を育むコーナーです。

STEMコーナーの中にICTを見つけました。肉眼では見ることができない1000倍のミクロの世界をみることができる”わくわくスコープ”。コーナーには子どもたちが思わず覗いてみたくなるような素材がたくさん置かれています!

 わくわくスコープは、写真や動画を撮ることもできます。ミクロの世界を写真に撮り、印刷して作った”すこーぷでのぞいてみた!”クイズのコーナーもありました。観察して終わりではなく、次の遊びに繋げることができるのもICTの魅力の一つです!

いらっしゃいませ!”じょうざんずし” 〜 ICTで広がる保育 〜

 さまざまな遊びが展開される中、3~5歳児クラスで一番の盛り上がりを見せていたのは、お寿司屋さんごっこでした!

 お寿司屋さんのセットや子どもたちの服装、食べてもらうためのお寿司など、継続して遊びが続いている様子がうかがえました。お寿司屋さんごっこに勤しむ子どもたちの傍ら「せいさくゾーン」では”じょうざんずし”のポップ作成など制作活動に夢中になる子どもたちの姿もありました。それぞれが好きなことに取り組みながら、一つの遊びへとつながっていく様子が印象的でした!

 ”じょうざんずし”の遊びの中で、ICTの素敵な活用エピソードも見ることができました!紙で上手にポップを作ることができない年少の男の子がICT(チョキペタ:撮った写真を切り貼りして、簡単にコラージュ画像を作ることができるアプリ)を使ってポップを作ろうとしていました。以前、年長さんが使っている姿を見て憧れて、自分も使ってみたいという気持ちがあったそうです。文字や使い方がまだ十分にわからないなか、先生に聞きながら、一生懸命に文字を打ち込んでいました。文字を知りたい、覚えたい、という気持ちが伝わってきました。

 すると年長の女の子2人がやってきました。使い方がわからない年少さんに「使い方を教えてあげる」と3人のポップづくりが始まりました。さすが年長さん!使い方もすっかり身についています。 道具の一つとして、コミュニケーションツールの一つとしてICTが自然と保育の中に溶け込んでいることがよくわかりました。
 また、アナログとデジタルの活動が往還して、どんどん遊びが広がっていくのも”きっつ”の大きな魅力です!そして異年齢で過ごし、一緒にいる人を自分で選べる環境だからこそ、憧れたり憧れられたり、教えたり教えられたりする関係が自然に生まれています。そうした関わりが日常の中にあることの良さが、よく表れていると感じました。

0・1歳児クラスや2歳児クラスでのICT活用

 0・1歳児と2歳児のICT実践については、ドキュメンテーションを掲示されていました。
 0・1歳児クラスでは、書いた絵や撮った写真が画面の中で自由に動く”アートポン”を使って、保育室にジャングルの世界を創り出していました。
 また2歳児クラスでは、新聞あそびの釣り遊びから”アートポン”を使った水族館づくりに発展したり、アイスクリーム屋さんごっこで”チョキペタ”(コラージュアプリ)を使ってアイスの模様を作ったりと遊びが盛り上がっていました。2歳児担任の先生は「ICTがあることで、子どもたちの表現の選択肢が広がって、遊びがさらに面白くなった」とお話しされていました。


【午後】シンポジウム
遊びから探求へ!幼保小接続とICTの可能性― 環境を通した学びと幼保小の接続を考える―

テーマ①:ICTで広がる保育 ~こどもの道具としてのICT~

● 城山幼稚園 園紹介・実践発表(2歳児・以上児)

園長 豊田先生 ・2歳児担任 中島先生 ・以上児担任 伊藤先生

 まずは園長先生から園の紹介をしていただき、中島先生と伊藤先生からはICT活用の実践発表をしていただきました。4月からICTを取り入れた城山幼稚園さん。「保育環境を構成する道具の一つ」として、子どもたちの活動に合わせてどのように活用していくのか。ルール作りも含めて試行錯誤してきた過程や、実際の保育の中での具体的な活用事例についてお話しいただきました。
 発表の中で語られた「私たちが考えている以上に、子どもたちはデジタルとアナログを上手に使いこなしている」という言葉が、とても印象的でした。先生方の発表を通して、子どもたちの日常の姿や何気ない一言を丁寧に拾い上げ、遊びや学びへとつなげていく保育者のアンテナの高さこそが、城山幼稚園の保育を支えているのだと感じました。

● 大豆生田先生 講評

 午前中に見学した保育の様子を振り返りながら、ICTの「自然な使われ方」についてお話がありました。大豆生田先生のお話で特に印象的だったのは「今日の実践は、それほど『ICT、ICT』していなかったですよね」という言葉です。ICTが前に出すぎるのではなく、あくまでも子どもたちの興味や「やってみたい」をベースに、無理なく保育の中に溶け込んでいることが大切だということが改めてよくわかりました。
 城山幼稚園さんでは子ども主体の保育や、遊びを中心とした関わりが前提にあって、その結果としてICTが使われています。だからこそ、ICTは五感を使った遊びや、友だちとの関わりを深めるものになっているのだと感じました。0~5歳児まで、どの実践を見ても、ICTが道具として自然に使われており、その結果として遊びが豊かになっていることの大切さが、強く心に残りました。

● パネルディスカッション

大豆生田先生 × 豊田園長先生 × 中島先生 × 伊藤先生 × スマートエデュケーション ニフュユス × スマートエデュケーション 大澤

 ICTは、家庭ではすでに当たり前に使われている道具だからこそ、それをクリエイティブな「道具」としてどう使っていくのか、子どもたちとデジタルをどう出会わせていくのか。そこはやっぱり、私たち大人がしっかり考えていかなければいけない、という話から始まりました。

 もともとICTに興味があったという豊田先生。アプリの存在を知ったときに「面白そう!何かに使えないかな」と、一つの道具や画材を入れるような感覚で導入を決めたと話されていました。
 担任の先生のお話のなかでは、お寿司屋さんごっこで、保育者としてはアプリを使って注文表を作ろうとしていたものの、子どもたちのアイデアでいつの間にかお店を宣伝する動画づくりに変わっていった、というエピソードも紹介されました。大人の予想を超える子どもたちの発想力の素晴らしさが伝わってきました。デジタルを通して、子どもたちの隠れた力やアイデアに出会えることも、ICTの魅力の一つだと感じました。

● まとめ:ICTで広がる保育

スマートエデュケーション ニフュユス

 ICTは決して目的そのものではなく、あくまでも子どもたちが自分で選ぶ「道具」の一つであり、環境の一部。だからこそ、保育者がデジタルツールを子どもたちに提案するためには、まず大人自身がその道具の特性をよく知っておくことが大切です。
 KitSの開発責任者であるニフュユスは、ICTもハサミや図鑑と同じで、「今、この場面で出すといいかな?」とタイミングを考えて差し出すことが必要だということを強調していました。ICTで何ができるか、という視点だけではなくて、環境全体の中でICTをどう位置付けるかが大切です。

 遊びや学びの主体はあくまでも子どもたちですが、保育者が環境を整えたり、ちょっとした問いかけをしたりすることで、デジタルが“仕掛け”として生きてきます。城山幼稚園さんに関しても、ICT導入直後の半年前と比べると、デジタルの活用というよりはアナログの豊かさが目立つようになっています。デジタルをきっかけに「作る・触る・試す」といった活動につながる素材の豊かさが、より意識されるようになってきたのではないか、と語っていました。


テーマ②:幼保小の架け橋を考える

● 乳幼児教育から小学校も学ぶ、環境を通した学び:玉川大学 大豆生田 啓友先生)

 今回のお話は、保育の実践をもとに、0歳から18歳までの育ちと学びをどうつないでいくか、という視点で語られました。環境は一度整えたら終わりではなく、子どもたちの興味関心に合わせて何度もつくり直していくもの。自然や素材、ICTも、主役になるのではなく、互いに支え合いながら探究を広げていくことが大切だ、とお話しされました。
 また子どもの「やってみたい」という声から対話や試行錯誤が広がり、STEAM、とくにアートにつながっていく保育実践の様子も紹介してくださいました。作ることや試すこと自体が、創造的で科学的な学びなのだということを改めて感じるお話しでした。大人は「教える人」ではなく、子どもの探究を支える環境づくりの担い手であることの大切さが、強く伝わってきました。

● これからの学校教育とこどものICT:熊本市教育長 遠藤洋路氏

 まずは午前中に見学した城山幼稚園さんでのICT活用についての感想をお話ししてくださった遠藤さん。ICTが子どもたちの探究を支える「特別じゃない、自然な道具」として使われていることがとても印象的だったとお話しされました。
 積み木を高く積むのも、デジタル顕微鏡で葉っぱを観察するのも、子どもたちにとっては同じ「探究活動」。アナログかデジタルかは単に使っている道具の違いに過ぎません。ICTを特別視するのではなく、他の道具と等しく選択肢の一つとして提示されることが大切だ、と語られました。
 小学校でのICTを活用した授業実践も紹介され、探究的で協働的な学びが、デジタルによって、より実現しやすくなっていることをお話しされました。城山さんの様子を見て、低学年では特に、ICTを使うことで、遊びと教科の学びがなめらかにつながっていくのではないかという可能性を感じたそうです。
 幼稚園から小・中学校まで共通して目指すのは、子どもたちが自分で考え、主体的に行動できる力を育てること。そのための一つの有効な手段として、ICTには幼保小の壁を越えて学びをつなぐ力がある、というメッセージで締めくくられました。

● パネルディスカッション

遠藤教育長 × 大豆生田先生 × 豊田副園長先生 × スマートエデュケーション 池谷

 第二部のパネルディスカッションでは、幼児教育から小学校、さらにその先までの学びをどのように自然につないでいくか、というのが大きなテーマとなりました。

 保育と小学校の接続については、「小学校に行くための練習」をするんじゃなくて、環境の中での経験を積み重ねていくことが大事だよね、というのが、登壇者の皆さんの共通した考え。座る練習をしたり、文字の練習をしたりすることよりも、「人の話を聞いていると楽しい」「聞いてもらえないと悲しい」など実感のある経験をすることが大切であり、その経験こそが小学校以降の学びにつながっていく、という話が印象的でした。
 横浜市のとある小学校では1年生の教室に保育室のような遊びや学びのコーナーが設置されています。遊びや探究を軸にした授業に転換することで、子どもたちが生き生きと学び、不登校がほとんどなくなっているというエピソードが紹介されました。
 幼保小の連携がなかなか進まない理由には、もちろん制度や組織の違い、忙しさもあると思います。ただそれを言い訳にしたり、どちらか一方の問題にするのではなく、地域の中でしっかりと顔を合わせ、子どもの姿を見ながら対話をする機会を頑張って作っていくことで、少しずつ乗り越えていけるのではないか、と締めくくられました。

● まとめ

スマートエデュケーション 池谷

 教育は今、大きな転換期にあります。先生が教える学びから、子どもが主体となる学びへと変わり始めており、その動きは幼保小の現場にも広がっています。0歳から18歳までの育ちをゆるやかにつなげていくことが大切になるなかで、実は子どもを取り巻く環境にはさまざまな壁が存在しています。例えば幼稚園と小学校、幼稚園と保育園、先生中心の学びと子ども中心の学び、アナログとデジタル、企業と学校……。
 この壁は子どもが作ったものではなく、すべて大人が作ったもの。最後は「大人が作った壁は、大人が壊すしかない」と池谷は力強く語ります。目の前の子どもの姿を見て、その子に最適な学びの環境を提供するのが大人の役割。そのためには、子どもの育ちの当事者として関わり、対話を重ねていくことが必要です。池谷のメッセージに、参加者の皆様も強く共感されていた様子でした。

感想

 城山幼稚園の実践を通して、環境そのものが子どもの学びを支えていることを強く感じました。異年齢で過ごせる空間や、興味を引き出すコーナーの中で、子どもたちは「学ばされている」のではなく、遊びに夢中になる中で自然と探究を深めていました。その姿はとても主体的で、幼児期の学びの豊かさを改めて実感しました。ICTについても、アナログかデジタルかという二者択一ではなく、どちらも探究や表現を支える道具の一つとして捉えることの大切さが印象に残りました。

 また、幼児期の遊びや探究は、小学校に行くための準備ではなく、そのまま小学校以降の学びへとつながっていくものだという視点にも共感しました。座り方や文字の練習以上に、人と関わる中で楽しい、悔しい、伝わった、伝わらなかったといった実感のある経験を積み重ねることこそが、学びの土台になるのだと感じました。

 そして何より、幼保小の間にある壁は子どもが作ったものではなく、大人が作ってきたものだ、という言葉が心に残っています。その壁を壊せるのも大人しかいないからこそ、当事者として関わり、顔を合わせて対話を重ねていくことが必要なのだと思いました。保育園や幼稚園、小学校、中学校、さらには企業まで、立場や制度の垣根を越えて、子どもが育つ環境を一緒につくっていかなければならないと強く感じました。

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今後も様々なイベントを開催予定です!お楽しみに!

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