
スマートエデュケーションの植木です。
2025年6月23日(月)に開催した「YouTubeから生まれた佐渡島プロジェクト」セミナーのレポートをお届けします!
今回は保育におけるデジタルの活用をテーマに、玉川大学教授の大豆生田先生と別海くるみ幼稚園の先生方に、実践事例や子どもたちの主体性を尊重した環境づくり、大人の役割についてお話をいただきました。
↓ セミナー動画はこちらから。
別海くるみ幼稚園の紹介(2分9秒~)
別海くるみ幼稚園では、園の理念を実現するために、築30年以上の園舎を2年前に改装。園庭も真っ平らなグラウンドから雑木林をイメージし、築山や泥場、土管など、自然との触れ合いの中で子どもたちが自ら試行錯誤できる素敵な環境に生まれ変わりました。

子どもの興味関心から生まれる主体的な保育を尊重し、「好き」を最大限に大切にするなかで、2022年にiPadを導入。表現や探究の道具として、室内・室外を問わず、子どもたちも先生たちも自由にiPadを活用できる環境が整えられています。

ICT導入直後は、軌道に乗るまで先生方もさまざまな課題に直面していたそうですが、今回は、そうした試行錯誤の中から生まれた、子どもたちと先生による素敵なプロジェクトをご紹介します。
YouTubeから生まれた佐渡島プロジェクト(4分26秒~)
今回の実践事例発表では、日常の遊びから生活発表会につながり、実際に佐渡島を訪れた先生や子どもたち、佐渡島の思い出をプレゼンしてくれた保護者様、ついにはYouTuber本人や佐渡市長にまでたどり着くという、素晴らしいプロセスのお話を伺いました。
きっかけは、2024年7月、4歳児クラスの遠足ミーティングでのことでした。 1人の子が繰り返し「佐渡島」と口にしていたことを、先生が不思議に思い、その言葉に耳を傾けてみたところ、「佐渡島系YouTuber・けえ」の存在が明らかになりました。先生も動画を見て「おもしろい!」と感じ、子どもたちと一緒にGoogleで佐渡島について調べてみました。すると、そこから子どもたちの興味はさらに広がっていき、園庭と室内、アナログとデジタルの遊びが行き来する中で、子どもたちの「佐渡島」への探究心はどんどん深まっていきました。

最初は園庭の水たまりを使った「たらい舟ごっこ」、築山では「火山づくり」、室内では段ボールや空き箱で「佐渡島のジオラマ」を製作したり、お人形を使って「佐渡島ごっこ」をしたりと、遊びの中に佐渡島の要素が次々と取り入れられ、佐渡島熱が大爆発しました。
子どもたちの熱は冷めることなく、アプリで動画を作ってYouTuberになりきったり、Googleアースで佐渡島を調べて図鑑を作ったりと、活動はさらに発展!

また、先生の働きかけにより「佐渡+ゲーム」という形からオリジナルの遊びが生まれ、オリジナルビンゴを作る際にはアプリを使ってイラスト作成することで、絵を描くハードルが下がり、子どもたちにとって扱いやすい道具のひとつになっていたそうです。

佐渡島の遊びと並行して、園ではアイドルごっこも流行していました。ある男の子が「自分がアイドルの格好をしてダンスをするのは恥ずかしいけど、ペープサートの“自分”ならできる」と話し、自作のペープサートを作ってダンスに参加。この出来事をきっかけに、子どもたちの間でペープサート作りがブームになりました。
子どもたちの様子を見て、「この方法なら、佐渡島に行った気分を味わえるかも」と、プロジェクターで壁に佐渡島の映像を映すと、「佐渡金山出して!」「たらい舟の海がいい!」と背景リクエストが続出。子どもたちは金山で金を掘ったり、ぶりカツ丼を探したり、さまざまな種類のペープサートを作ってオリジナルの物語を作って楽しんでいました。
小さな子も年長児の優しい声掛けで自然と参加するように。特に盛り上がったのは、映像のブリ解体ショーから生まれた“新聞ブリ三枚おろしごっこ”。その手さばきには先生も驚かされたようです。
トキと一緒に空を飛んだり、たらい舟を使わずに海を泳いで渡ったりと、子どもたちの想像力や発想力、アドリブの力に驚かされた先生。ペープサートを通して、自分自身が物語に登場する面白さや、背景を自由に変えることで、実際に行っていなくても佐渡島を旅する楽しさを味わうことができたと語ってくれました。

活動を通して、ICTは「調べる道具」としてだけでなく、「表現の道具」として活用することで、子どもたちの空想の世界が広がっていくことを実感。大人が管理したり、子どもに任せきりにしたりするのではなく、大人と子どもが一緒に使いこなしていくことで、活動もより広がっていくと感じたそうです。
大豆生田先生 講評(22分17秒~)

大豆生田先生から事例に対して以下のようなご講評をいただきました。
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実際に遠足の行き場所を決める際に「佐渡島」という、その子が家庭で見たYouTubeのアイデアは採用されなかった。軽んじてしまいがちですが、そこで終わりにしなかったことがこの事例のとっても大事なところです。これがなかったらこの活動は生まれなかった。だからこそ、一人ひとりの声を尊重することが大事です。
また、サークルタイムの中で保育ウェブを使って先生と子どもたちで意見交換をし、考えが広がったり深まったり、興味関心に応じて環境を変えることで面白いことがどんどん起こっていく。家庭も巻き込んでいるというところも文化的実践になっていたと思います。
昨年、幼稚園教育要領や保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領でこれまでの振り返りと、これから何が大事かということを改めて整理しました。
その中で、子ども主体の遊び、環境、五感に触れて関わる遊びが大事だということと同時に、現代的諸課題に応じて検討すべき事項の一番上には幼児教育施設におけるICTの活用が明記されました。
ICTは、子どもの遊びや環境の中で実体験を通した学びにおける「道具」として活用されることが大切。「道具」ということは、それを使うことが目的となるより、何かをするための手段として活用される。ICTは透明化されるともいえるかもしれない。
今日の事例は、ICTを使うことで、子どもの生活体験がより豊かになっていた。ICTが生きている素晴らしい事例でした。
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これからICT導入を考えている園の皆さまへ別海くるみ幼稚園の先生方からのメッセージ(39分47秒~)
別海くるみ幼稚園でも保育にICTを導入した当初、大きな戸惑い・不安があったそうです。
想定外のことが起きて、急遽iPadを回収することも・・・。しかし、先生同士で対話や研修を重ね、大切なことは「大人の価値観で一方的に制限することではなく、iPadの存在が埋もれるくらい周囲の環境を豊かにすること」「先生がすべての答えをもっているわけではなく、子どもたちと共に学んでいく姿勢が大切」だと、感じたそうです。
少しずつ環境が整い、子どもたちの選択肢のひとつとして自然と馴染む道具になっていったiPad。まずは先生が「やってみよう、楽しんでみよう」という気持ちで挑戦してみてほしいとお話しいただきました。

Q&A(43分00秒~)
Q:iPadを保育の中に出すタイミングが、今も難しいなと感じる時があります(別海くるみ幼稚園さんより)
例えばお花を見つけたとき、分からないからiPadで調べるのか、ここは図鑑なのか、それとも子どもたちに聞いてみるか、iPadを出して子どもがすぐに検索できるわけではない。どこを押すのか、ひらがなが分からないから教えてほしいなど、そこにたどり着くまでの試行錯誤も大事だとすれば学びになっているため、iPadも悪くないと思いながらいつも出し方に困っています。
大豆生田先生:今のその葛藤自体が大事だなと思っています。 どこかに正解があるわけではなく、今子どもたちにとってどうすることがいいのか、その揺らぎの中に大事なことがあると思います。
子どもが何かに興味を持った時に先生がすぐに「調べてみよう、検索してみよう」と言うと、子どもたちが声を上げるチャンスがなくなります。子どもからの「こうじゃないかな」「うちのお母さん知ってるよ!」などの思考や試行錯誤のプロセスが消えてしまうのだとしたら、すごくもったいないですよね。すぐに答えを出そうとするのではなく「〇〇ちゃんなら知ってるんじゃない?」などの声掛けがあってもいいと思います。
Q:園の屋内外で自由に使えるiPadについて、フィルタリングはどのようにされていますか?子どもたちをデジタルデバイスの中毒性から守ることはされていますか?
別海くるみ幼稚園:例えば子どもたちがYouTubeを見ている時に、まず「ダメ」と言うのではなく、子どもが何を見ているんだろう、何に興味関心があるのかなという気持ちを持って、子どもと一緒に見てみます。一緒に見たときに「これを踊りたいのかな?」と思ったら一緒に踊ったり、「ゲームを作りたいのかな?」と思ったら一緒に作ったりします。一方でずっと見ているだけだなと感じたら「家でもできるよね」と声を掛けるようにはしています。
初めはiPadに興味を示す子も、他に楽しいことがあれば執着することはないです。子どもが執着するようならiPadを禁止するのではなく「環境を見直さなくては」と思います。
大豆生田先生:ICTは「異なるもの同士をつないでくれる」道具でもあります。本物と映像、現実と仮想、立体と平面をICTがつないでくれることで、子どもたちは豊かな空想の世界に入り込むことができます。
一方で注意しなくてはいけないこともあります。まずひとつ、PCやタブレットは画面が小さいこともあり「個人の活動になりやすい」という特徴があります。グループで活動したり、プロジェクターにつなげることで多くの子どもが見られるようにしたりするなど、学びを共有し、クラス全体の学びにつなげる機会を、意識して作ることが重要です。
そしてもうひとつ。ICTは人工物です。人工だから悪いということではないですが、自然との出会いを作ることも大切です。それぞれの素材や道具には特徴があり、その特徴を生かして学びに取り入れる視点を持つことが、豊な学びの環境づくりにつながります。
まとめ
ICTの導入には迷いや葛藤もつきものですが、その「揺らぎ」も含めて、子どもたちと共に、生活や遊びの中でのひとつの道具として活用していってほしいと、今回の別海くるみさんの保育実践事例や大豆生田先生のお話を聞いて、改めて感じました。デジタルとアナログがうまく溶け合うことで、子どもたちの世界がさらに豊かに広がっていくと良いなと思います。
おしらせ
次回のICTセミナーは9/8(月)です。大豆生田先生をゲストにお迎え日、仙台市の向山こども園さんの実践事例をもとに「保育におけるAI活用」について考えます!
また7/25(金)には今回事例発表をしてくださった別海くるみ幼稚園さんの公開保育を行います。

お申し込みは以下のボタンから!皆様のご参加、お待ちしております!






