公開保育

2026/10/8

【公開保育レポート 認定こども園 ひなたの風】地域が園庭!「やってみたい」から広がる探究とアトリエの環境(福岡県)

 こんにちは!ナビゲーターの滝野です。9月26日に福岡県の認定こども園ひなたの風にて開催された公開保育の様子をレポートします。

 「園庭のない園」である同園。しかし、そこには「地域が園庭」として広がり、子どもたちと街、そして保育室が豊かにつながる素晴らしい環境がありました。子どもたちの「やってみたい!」という思いがどのように遊びと探究へ発展していくのか、盛りだくさんの1日をお届けします!

【前半】実践発表・保育見学

「地域が園庭」 街全体で育む探究心:園長 岡本先生

 まずは岡本園長先生のお話からスタートしました。ひなたの風には園庭がありません。だからこそ「地域に出る」ことを大切にされています。

 その象徴的なエピソードが、猿田彦神社の「サルのお面探し」。街の中にあるお面を探すリアルな“ウォーリーをさがせ”のような活動を通して、子どもたちはなんと339個ものお面を見つけたそうです!
 「この道に行きたい!」「神社の人に報告したい!」というワクワクから出発し、数を数えたり文字に親しんだりと、自然な形で要領指針に記載されている技能習得へとつながっていく過程がとても印象的でした。「なんで?やってみたい!」という興味関心を起点に、わくわくスコープなどのICTをわくわくを見つける材料として活用し、街に出て本物に出会い、そして保育室に持ち帰る。地域での出会いが保育室を豊かに変えていく様子がひしひしと伝わってきました。

環境に思想を流し込む「協愛アトリエ」:理事長 横山先生

 続いて理事長の横山先生からは、法人全体での保育内容の見直しや「協愛アトリエ」の取り組みについてお話しいただきました。「子どもも先生も主体である」という考えのもと、専用の空間がなくても、棚一つ、ワゴン一台からアトリエは始まるんだそうです。私の中にもなかった新たな視点をいただきました。

 「ひらく→ふれる→ゆらぐ→つながる→うまれる」というサイクルの中で、整えすぎない空間に「思想を流し込む」という表現がとても心に残りました。

 社会福祉法人 協愛福祉会さんは、宮崎、福岡、東京で園を運営しているということもあり、その地域ごとの特性に合わせた環境設定をおこなっています。いい意味で型にハマりすぎない、柔軟で合理的なスタイルも、各園がそれぞれの特色や長所を持つことができている一因なんだと感じました。
 ひなたの風では、プロジェクト教育・自由選択教育・アート・外遊び散歩の充実という4本の柱に「協愛アトリエ」を掛け合わせることを意識して保育を行っているそうです。この園としての方針は以下の保育の様子にとても反映されていました。

 子どもの「やってみたい!」が形になる保育環境

 園内を見学すると、どのクラスも子どもたちのアイデアで溢れていました!今回は私がしっかりとお話をお伺いできた3つの保育室の取り組みを紹介します!

【そらぐみ(以上児の異年齢クラス)】

 そらぐみは、今は大きく二つのテーマを軸に日々の遊びが展開されているそうです。
 テーマ①はなんと「におい」。
 トイレが臭くて行きたくないという女の子の発言から、「いいにおいだったら行きたくなるかな?」と興味が広がったそうです。家から素材を持ち寄ったり、食べ物の皮を干したり。さらには年少組の時のガチャポンを活用して「においガチャポン」まで誕生!1人の子どもの小さな声から、クラス全体が様々な学びや経験をしている素敵な事例でした。

【においけんきゅうじょ】過程も掲示!

【においガチャポン】

 テーマ②は「そらまち(まちづくり)」。
 レゴブロックから始まり、やがて廃材やカプラを使った街づくりへと発展。既存のブロックよりも難しいけれど、自由度が高く面白いと夢中になっている様子でした。
 大人でもどうやって作ったかわからないような複雑なカプラの建造物もあり、遊びの中で子どもたちが試行錯誤し、遊びが探究に変わっている様子がとてもよくわかりました。KitS(きっつ)を使って、街に来たお友だちが楽しめるコーナーも用意されていました!

【カプラや制作物でできたそらまち】

【そらまちを走るドクターイエロー】

【電車の待合室】きっつで遊べるよ!

【1歳児クラス】

 カラスの鳴き真似にハマったことをきっかけに、「カラスコーナー」が登場!街でカラスを探し、鳥を呼ぶ絵本を読み、「カラスが食べるもの(オレンジ)」を作ってジュースにして飲んでみるという食育まで展開されていました。遊ぶときはカラスが飛んでいて、ご飯のときは電柱にとまり、お昼寝のときはお家の木に帰る……活動に合わせてカラスの位置が変わる環境の工夫に、先生方の柔軟でクリエイティブな考え方を見ました。
 こちらのクラスの担任の先生は、自分の持ち時間も忘れて、子どもたちとカラスのストーリーをとても楽しそうに語ってくれました。そして先生はなんと一歳児担任は今年が初めてだということ!しかし、子どもたちの些細な表情の変化やまだまだ拙い発語から、子どもたちの思いを汲み取り、様々な仕掛けをされている姿に私も刺激を受けました。

【午睡時間はカラスも木のお家で休憩中】

【本も活用して興味の世界を広げる】

【2歳児クラス】

 こちらのクラスは、園内にいながら、園の外の世界を感じることができる保育室でした。お散歩の途中で「アイス食べたい!」となったことから、みんなでアイス作りがスタート。アイスのお店ができ、移動販売カートまで完成していました。実際のお店に行って店員さんの掛け声(本物)を知ることで、ごっこ遊びがよりリアルで豊かなものになっていました。

【アイスやさんの移動販売カート】

アトリエコーナー 

 「えのぐけんきゅうじょ」や「探究コーナー」、「廃材コーナー」など、活動を往還しながら遊びが広がるような環境設定が随所にちりばめられており、流動的にコーナーが変化していく空間は見ているだけでワクワクしました!

【アトリエコーナー】

【探究コーナー】

【廃材コーナー】

【えのぐけんきゅうじょの研究アイテム棚】

【後半】講演・グループセッション

デジタルはアナログがあってこそ真価を発揮する:こどもなーと 和泉さん

 後半は、こどもなーとの和泉さんによるお話からスタート。こどもなーとさんは、もともとアトリエからスタートした園さんなので、「アトリエの中で保育をしている」という感覚を大切にされているそう。和泉さんのお話で特に印象的だったのは、デジタルとアナログ、フェイクとリアルの関係性です。

 「デジタルは単体では生きない。アナログがあってこそ真価を発揮するし、デジタルがあればアナログはもっと充実する」。この言葉を裏付けるように、雨の日の様子をプロジェクターで屋内に投影した事例が紹介されました。
 普段は水たまりに興味を示さない子が、映像を触りながら1時間も夢中になり、雨が上がると実際に外の水たまりで遊ぶようになったそうです。デジタルを通して出会い、本物(アナログ)を知る。実体験とつながるためのデジタル活動の素晴らしさを実感しました。

 また、探究において最も大切なのは「タウマゼイン(驚き、不思議に思う心)」であるという古代哲学プラトンやアリストテレスの考え方も紹介されました。「?」と思う気持ちや心が動く経験を得られるよう、諸感覚を働かせる環境を整えることを保育者は常に意識していないといけないということを学びました。

 そして、こどもなーとやひなたの風のように「地域を園庭」として捉える上で、地域を巻き込むというのは必要不可欠です。地域を巻き込むためには、遊びのプロセスを可視化し共有する「ドキュメンテーション」が極めて有効であるというお話に、大きく頷く参加者の姿が多く見られました。

対話で学びを深める!グループセッション

 個人ワークを経て、グループセッションが行われました。青い付箋に「今日の感想と学び」、赤い付箋に「質問」を書き出し、大きな画用紙に貼りながら対話を深めていきます。主任先生方やスマートエデュケーションの社員がファシリテーターとなり、参加者それぞれの視点で熱い意見交換が行われました。

 全体共有では、ひなたの風の保育を称賛する声が次々と上がりました。どのグループも共通して以下の3点を大きな学びとして挙げていました。先生方出た話を抜粋、要約してお伝えすとこのような感じでした。

  1. 先生方の素晴らしさ
    年齢や経験を問わず、全ての先生が自分の保育を楽しそうに語っている姿に感動しました。失敗を恐れず前向きにトライする意識が園全体で醸成されており、理事長先生や園長先生など管理者の方々の園運営の素晴らしさが伝わってきました。

  2. 遊びが連続する環境
    ドキュメンテーションを通して、子どもたちが何に興味を持ち、どう遊び込んでいったのかが1日の中で鮮明に理解できました。子どもたちの「やってみたい」に合わせてコーナーが変化し、単年で終わらず意図を持った保育の連続性が素晴らしいと思いました。

  3. 和泉先生のお話からの気づき
    「ICT導入に抵抗があったけれど、考え方が変わった」という声が多く聞かれました。デジタルとアナログは二項対立ではなく、デジタルがあることでアナログの世界の見え方が変わり、探究を広げるツールになるという気づきは、多くの先生方にとって大きな収穫となったようです。

感想・まとめ

 私のいたグループで、ひなたの風の先生が「こんなに私たちの保育を褒めてもらえるとは思っていなかった。とても嬉しい。」と仰っていました。

 私自身も昨年度まで教員をしていたので、この言葉には深く共感しました。自分の保育や教育実践を公開するというのは、「否定されるのではないか」「受け入れてもらえるだろうか」という大きな不安が伴います。今日を迎えるまでの準備や心労も図り知れません。しかし、参加者からの温かい評価を受け取った先生方の晴れやかな表情を見て、私まで胸が熱くなりました。

 日々の業務に追われ、自分自身の保育をアップデートする時間を確保するのは、この業界のリアルな課題でもあります。だからこそ、こうして保育を公開し、多様な視点で価値づけをしてもらう機会は本当に貴重です。評価は時に厳しいものかもしれませんが、それらすべてを糧とし、明日からの保育をさらにアップデートしていける。そんな「対話と学びの場」の重要性を、改めて強く感じた1日でした。

 また、グループワークの際は、栄養士の先生が手作りしてくださった美味しいクッキーをみんなで食べながら保育を語り合い、帰りの時にはお土産まで…このような素敵な気配りや優しさが溢れる園・先生方だからこそ、今日見せていただいたような素敵な環境が生まれているのだなと。やはり保育において最も大切なのは「人」であると教えていただきました。

 実践者の先生方、参加者の先生方、弊社スタッフ、今日参加した全員にとってとても実りある一日になりました。

 ひなたの風の先生方、そしてご参加いただいた先生方、本当にありがとうございました!


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