
みなさん、こんにちは。スマートエデュケーションの大澤です。
7月10日(木)に開催された「"アプリと自然と子どもたちの出会い"からICTの可能性を考える」セミナーのレポートをお届けします!
去る6月に、奈良県にてレッジョ・エミリア・アプローチをテーマとした国際展覧会「ボーダークロッシングス展 —行き来する、その先へ—」が開催されました。今回はその中で実施された「自然素材とデジタルツールを組み合わせた少人数の対話型ワークショップ」の様子を振り返りながら、レッジョ・エミリア・アプローチの視点をベースに保育における子どものICT活用を考えました。
スピーカーはレッジョ・エミリアでアトリエリスタとして4年間活動し、現在は全国の保育・教育機関・施設で活躍されている、みりおらーれ代表 津田純佳氏です。当日の環境構成の工夫や、子どもとの関わり方についても具体的にご紹介いただき、保育環境づくりのヒントが満載のセミナーとなりました。
ぜひご覧ください!
↓ セミナー動画はこちらから。
アプリと自然と子どもたちの出会い
ワークショップの概要紹介(2分30秒〜)
今回のワークショップでは4歳から6歳の子どもたち6人を対象に、約1時間の活動を行いました。ワークショップのテーマは「自然とデジタルと子供たちの出会い」です。
津田さんが設定した今回の活動のねらいは以下の4つ。「自然」の形や色、その不思議さや美しさを五感で感じる。「自然」を「デジタル」という別の言語を通して感じ、「自然」と自分の新たな関係性を作る、そして他の人と発見や美しさを共有する。こういったことをぜひ子どもたちに体験してもらいたい。そしてみんなで一緒に学び合いたいという思いから、今回のワークショップを設計されたました。

当日の環境
ワークショップ当日は、以下の図のような環境を用意して、子どもたちを迎えました。レッジョ・エミリア・アプローチでは環境設定がとても大切です。津田さんご自身も、どんな場所で活動するか、何人いるのかなどによって素材の置き方や活動の仕方を毎回工夫されるそうです。今回は五感で感じる不思議さや美しさ、デジタルを通した異なる視点、関係性の構築、そして周りの人との共有を重視した環境設定となりました。

今回はデジタル機器として、マイクロスコープ(3台)・プロジェクター(3台)・iPad(3台)・プリンター・マイクとスピーカー・スマートエデュケーションのアプリ『アートポン!』と『チョキペタ』を用意しました。

自然物は、生花・木の実・葉っぱ・観葉植物・竹・ドライフラワー・石・木材のカンナ屑などが並べられました。

続いて空間の配置です。プロジェクター3台を設置し、天井からは不織布や蚊帳を垂らしてプロジェクターの映像を投影しました。室内の真ん中には大きな鏡。これによって プロジェクターの光を壁だけではなく天井などにも映し出しました。映像と自分たちが一体化するような没入感の高い空間です。
暗がりがあることで、プロジェクターに投影された自然がとても美しく見える、光の色がはっきりとわかる、そして子どもたちがワクワクする!そんな素敵な環境設定ができあがりました。

活動詳細(25分00秒〜)
ここからは、活動の流れについて簡単にご紹介します。
① 「自然」って何?「デジタル」って何?
子どもたちにとって「自然」はとても身近なもの。そんな自然について、改めて子どもたちに問いかけてみました。一人ひとりの言葉を引き出して、「自然」についてみんなで一緒に考えるためです。

子どもたちは、いろいろな虫の名前を教えてくれたり、「自然は空気を作っているんだよ」などと教えてくれたりしました。
続いて「デジタルって何?」「どんなデジタルを知っている?」という問いかけです。ここでも子どもたちはとても真剣に考え、いろいろなことを話してくれました。子どもにとってデジタルも日常的に身近にあるもの。しかし、意識的に関わっているものだということも感じられた、と津田さんはお話しされました。
② 見て触って、香りを感じて。自然をよく味わってみよう。
次に、お部屋に置いてある自然物の中から、それぞれ好きなものを1つ選んで、よく見たり、触ったり、匂いを嗅いでみたりしました。
なんで選んだのか。どんなところが好きなのか。触ってみるとどんな感じがするのか。津田さんの問いかけに答える子どもたち。その声や表情から、子どもたちが心の中にたくさんの言葉を持っていることがよくわかりました。

③ 道具を使ってみてみよう。
続いて、虫眼鏡を使って自然物を観察してみました。「虫眼鏡を遠くにすると、もっと大きく見える!」とレンズの仕組みに興味を持って、いろいろなことを試す姿もありました。

④ マイクロスコープで見てみよう。
ここでいよいよデジタルツールの登場です。マイクロスコープを使って、自然物を観察してみました。ドライフラワーのバラをみて「これはぶどうのおせんべい!」と話してくれるなど、それぞれが美しさに感動しながら、たくさんの発見をしていました。スコープの映像をプロジェクターに映すと、子どもたちの想像力はさらに膨らんでいきました。映像空間の中で身体を動かしたり踊ったりする姿も見られました。


⑤ アプリで遊んでみよう!
その後、マイクロスコープの映像と自然物の写真をアプリ上で組み合わせて映像を作り、みんなで鑑賞しました。

こちらがみんなで作った映像です。
映像の上にさらに植物の影を映すことで、光と影の活動にも発展していきました。みんな植物の形と影の美しさに興味津々!自然の中に入り込んで、自然と一体化したような感覚になって遊んでいました。

最後にプリンターでポストカードを作成し、プレゼント。子どもたちは自分たちが発見した自然の美しさに改めて感動していました。

2回目の活動
メンバーを変えての2回目のワークショップでは、「チョキペタ」というコラージュアプリを使って、自然の再構築を体験しました。みんなが撮った自然物の写真をデジタルでコラージュします。子どもたちの興味関心がよくわかる活動となりました。

ワークショップの後に・・・
ボーダークロッシングス展には、アプリを自由に体験できるコーナーも設置されていました。ワークショップに参加した後、体験コーナーで夢中になるお子さんの姿が。ある保護者の方からは「子どもがマイクロスコープで見た世界に感動したようで『マイクロスコープを買ってほしい』と頼まれました。まずは虫眼鏡を購入し、一緒に観察を楽しんでいます」という連絡が津田さんに送られてきたそうです。とても素敵なエピソードです!

保育者向けのワークショップも実施
子どもたち向けのワークショップの後、同じ内容で保育者向けのワークショップを行いました。自然の美しさに夢中になる先生方。津田さんは、 大人も子どもたちと同じ目線で驚きや不思議さを体験することが重要だとお話ししてくださいました。ワークショップの様子は、ぜひ動画でご覧ください!
最後に津田さんは、自然とデジタルと子どもたちの出会いについて、次のように締めくくられました。
「植物を顕微鏡で拡大して見るときに、科学的な目でおしべやめしべ、葉脈などを発見したり、知っていくこともももちろん大切ですが、そんなことは関係なく、まるで物語の世界の中にいるように、小さな世界に自分が入っていく驚き・ワクワク・ドキドキにつながる空間を作りたいと思い、今回はプロジェクターを3台使った環境を作りました。保育室環境でこれは難しいと感じられたら、最初は壁や天井に顕微鏡で自然物を拡大した映像や画像を映してみるところから始めても素敵だと思います。そしてもし、可能であれば和紙や不織布などを1枚垂らしてみて、そこから徐々に進化させていく。そんな取り組みをされるとデジタル環境ではありながら、アナログからさらに学んでみようという気持ちにもなっていくのではないかと思います」
質疑応答(47分30秒〜)
Q: 子供たち自身の気づきと、教育者の問いかけの大切なバランスはどうお考えですか?
津田さん: 今回のワークショップでは、一番最初に「自然って何だろう」とか「デジタルって何だろう?」という問いかけをしました。今回の活動の一番ベースになる問いかけですね。ベースの問いかけから子どもたちが気づいたこと、発見したこと、好奇心を持ったことを引き出し、そこに対して問いかけていくようにしています。事前に活動のねらいは考えますが、そのねらいに必ず到達しなくてはいけないとは考えていません。子どもたちの気づきを起点として問いかけていくことを大切にしています。
Q:今回、子どもたちが光と影に気付くきっかけとして、津田さんが植物の影を映して見せていましたが、タイミングやきっかけはどのようなものだったのでしょうか?
津田さん:今回は「デジタルと自然」がテーマだったので、光を素材にすることは事前には考えていませんでした。ただ、光にも興味を持ってくれたら嬉しいなという気持ちで、光を美しく感じられる素材として不織布や蚊帳、鏡などを用意していました。デジタル空間だけでも十分に楽しんでいる様子ではありましたが、子どもたちが家に帰った後も興味が続く何かをもうひとつプレゼントできたら、と思い、植物の影を映して見せました。
Q: 今回は4歳から6歳対象ということで、言葉で考えなどを表現できる年齢を対象に行われていた活動だったと思いますが、0歳から2歳など、まだ言葉でうまく考えを表現できない子どもたち活動するうえで、気をつけられていることはありますか?
津田さん: デジタルを通して美しさやものの見方、世界観が変わるような体験を、子どもたちにどんどん提案してあげてほしいなと思います。例えばプロジェクターで水中の映像を天井や壁、床などに投影し、小さな子どもたちがコロンと横になってその世界に浸ったり、森の中や風の動きが感じられるような世界を投影したり。
プリンターから何かが出てくる様子を一緒に見るのも、面白いですね。何かが出てきた!どこから出てきたんだろう?なんていう不思議を体験することができます。必ずしも子ども自身がアプリを操作する必要はありません。面白いな、と思えるような出会いをいっぱい作ってあげてほしいです。
Q:「形」をテーマに探求するとしたら、どんな問いかけから始めたらいいでしょうか。
津田さん: 言葉じゃない問いかけをすると素敵かもしれませんね。「問い」というと言葉で問いかけるというように思われるかもしれませんが、素材を提案したり、大人が行動して見せることも問いかけになります。例えば、影のできる環境で身体の輪郭を見せたり、OHPにものを載せて美しいシルエットを見せたりすることも1つの問いかけになります。そんな始まり方も面白いかなと思います。
<時間内にお答えできなかった質問>
Q:今回のワークショップでは少人数でじっくり関わっていましたが、保育者1人に対して子どもの人数が多い場合、どのように活動ができるのでしょうか。
津田さん:初めて子どもがデジタル機器と出会う時には少人数ずつゆっくり向き合える環境を作ってあげてほしいです。
子どもたちがその機械が何者なのか、どんなことができる可能性があるのかがわかってきたタイミングで、クラスの中でデジタル環境を常設できると良いと思います。
Q:6歳より大きな子ども、例えば小学生を対象とした場合はどのようなアプローチをされていますか?
津田さん:レッジョ・エミリア・アプローチは0歳から100歳までさまざまな年齢、国の方に向けて行っています。アプローチの仕方(問いかけ、対話、環境設定)は年齢によって変えることはしていません。年齢というよりも、その人の興味関心によって、環境設定やテーマが異なっていきます。
Q:(活動を)2回目、3回目など続けると学びの連続性はどこまで設定するのがよいのでしょうか。ねらいをどう立てるか、どこまで追求するのがよいのでしょうか。
津田さん:学びの連続性・終着点は活動を始める前に決めないことが理想ですが、実際は計画して進めなくてはいけないことが多いと思います。2〜3ヶ月ほど、ゆとりを持って行えるとよいですね。ねらいは子どもたちの関心事と大人の意図と両方から考えてみて欲しいです。どんな気づきや学びにつながりそうか予測しながらも、子どもたちの気づきを深めることを大事にして、可能であれば期限を決めずに追求してみてください。
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