セミナー

2026/5/11

〈セミナーレポート〉4/27「アトリエリスタと考える 子どもの”なんで?”から始まる探究」

みなさん、こんにちは。スマートエデュケーションの中村です。

2026年4月27日(月)に開催した ”アトリエスタと考える子どもの「なんで?」から始まる探究” のセミナーレポートをお届けします!

近年、子どもの好奇心や「なんで?」を起点にした探究的な保育への関心が高まっています。
「探究って実際どうやって生まれるの?」「ただの遊びで終わらずどう深まるの?」——そんな問いを持つ先生方も多いのではないでしょうか。

今回のセミナーでは、イタリアのレッジョ・エミリアで約5年間アトリエスタとして活動されていた津田純佳氏をお迎えし、子どもの「なんで?」から探究がどう始まり、どう広がるのかを具体的な事例をもとに紐解いていただきました。
(実践園:京都府・京都幼稚園、京都府・嵯峨幼稚園)

後半はスマートエデュケーションより、東京都・新栄保育園での「えだまめ栽培」事例とICT活用についての事例を紹介し、最後に質疑応答です。
豊かな保育環境をつくるヒントが盛りだくさんの内容です。ぜひご覧ください!


↓ セミナー動画はこちらから。


子どもの「なんで?」から始まる探究ー子どもと大人による学びのプロセス
アトリエリスタ/みりおらーれ代表 津田純佳氏

アトリエリスタとは? ── レッジョ・エミリアの保育(3分30秒~)

アトリエリスタとは、イタリア北部の都市、レッジョ・エミリアの保育園・幼稚園に必ず1人配置されている造形・表現の専門家です。
各園に備わる「アトリエ」は単にものを作る場所ではなく、考えたり、対話したり、実験したりする「実験室・研究室」。津田さんはレッジョ・エミリアに約5年間滞在し、現在は日本で実践されています。

「探究」ってどういうこと?(5分30秒~)

津田さんは探究をこう定義されました。
「探究とは、問いを手がかりに、子どもと大人が考え、試し、対話しながら、ともに学び〈意味や未知〉をつくっていくプロセスそのもの」

大切なのは「子どもだけ」でなく「子どもと大人が一緒に」という視点。知識は受け取るものではなく、自分たちで能動的につくるもの——これがレッジョ・エミリアの根底にある考え方です。

探究の始まりは2つあります。①子どもの興味・関心から自然に始まる場合と、②大人の提案・願いから始まる場合。どちらも対話の中で育っていきます。

探究を進める 4つのキーポイント

津田さんは探究を深めるためには以下の4つのキーワードが大切だとお話しされました。

【問い】問いは、探究を動かす

正解を急がないことが大切です。子どもの疑問をすぐに解決するのではなく、問いを問いのまま育てていく。一人の問いをクラス全体へと開いていくことも保育者の役割です。

【環境】環境は、探究を支える

レッジョ・エミリアでは「環境は第3の教師」と呼ばれます。何を・なぜ・どこに用意するか——意図ある環境設定が探究を支えます。子どもの気づきに応じて環境はどんどん変化させていきます。

【言葉】言葉は、探究を深める

言葉は話し言葉だけではありません。身体の動き、表情、絵を描くこと、土をこねること——すべてが言葉です。五感から生まれる表現を丁寧に受け止めましょう。

【共有】共有は、探究をひらく

共有は結果発表ではなく、お互いの思考を持ち寄る場。活動の途中でも何度も共有の機会を作り、一人の発見をグループ・クラスの発見へとつないでいきます。

さらに探究を深めていくためには、対話と記録が欠かせません。対話は大人同士、大人と子ども、そして子ども同士の対話を意味します。

実践事例①:土粘土と竹で「根っこ」を探究(28分50秒~)

京都幼稚園・年長児クラスでの実践です。子どもたちは大きな土粘土の塊と出会い、「これは何者?」という問いから探究が始まりました。保育者も「土粘土だよ」とは教えません。問いを問いのまま育てることが探究の核心です。

▲ 問い:「紙粘土?油粘土?ちがう……」「水を入れたらわかるかも!」

こちらの幼稚園では先生たちが子どもたちに伝統的な文化、素材体験もしてほしいという思いもあり、竹も用意しました。
竹の穴・節・形への疑問から「根っこってどうなってるの?」という問いが生まれ、粘土で根っこを想像しながら作ることになりました。
「迷路みたいになってる」「雨を吸いこむよ」「ここをつなげよう!」と子どもたちは対話しながら思考を表現していきました。
本物の根っこと出会うことで、子どもたちの想像と現実が交わります。粘土が乾いてひび割れるアクシデントも起きましたが、子どもたちは最初の体験(水でドロドロになった記憶)を思い出して解決策を考えました。失敗こそが本当の学びのチャンスです。

▲ 環境:園庭の畑で本物の根っこと出会う

子どもたちの考えを共有する場にICTは有効です。
子どもたちの思考を共有することで探究に広がりが生まれます。活動の締めくくりには保護者向けの「探究活動の軌跡」展覧会を開催。作品だけでなく、対話の記録・使った素材・プロセスの写真も展示し、子どもたちの思考の豊かさを地域へ伝えました。

▲ 子どもたちの思考・仮説・理論の学びのプロセスを展示

実践事例②:自然×デジタル×グラフィック(52分10秒~)

嵯峨幼稚園(京都)・年長児クラスの実践です。外遊びは大好きでも「描くこと」に苦手意識のある子が多いクラス。「外でまず活動してみよう」という大人の提案から始まりました。

子どもたちは園庭を探索し、葉っぱ・木の実・土と出会います。「手で考える」こと——全身で感じながら思考する乳幼児本来の姿を大切にします

マイクロスコープ(KitS「わくわくスコープ」)で見えない世界が広がります。「見え方が変わると、ものの見方が変わります。視点が増えていく——それが探究的な思考につながっていきます」

たっぷり「見る」体験を重ねた後、子どもたちは自然と描きたい気持ちを持ち始めます。「描くこと」も言葉のひとつ。どこで・どんな風に描くかも子どもが選べる環境が大切です。

▲地面に寝そべって描くーー場所・姿勢も子どもが選べる環境を

KitSのアプリ「ヒカリラボ」を使うと、自分の絵とカメラ映像を簡単に合成することができます。次々と創造的な使い方を発見する子どもたち。ICTは正解を調べる道具ではなく、新しい問いを生み出し視点を転換させる道具です。

▲子どもたちがヒカリラボで表現した世界

実践事例③:えだまめ栽培から始まった探究(1時間8分28秒~)

続いてスマートエデュケーションのニフュユスより、東京都・新栄保育園の探究の事例をお話しさせていただきました。

「やさいたんてい」

散歩で拾った木の実から「育てたい!」という気持ちが芽生え、クラスで相談。お花屋さんに直接聞きに行き、えだまめの種を選んで植えました。タブレットで観察記録を始めると、子どもから「なんだか探偵みたいだね」という言葉が生まれ、「やさいたんてい」としての活動がスタートしました。

枝豆が虫に食べられたことをきっかけにカカシ作りへ、枝豆が茶色くなったことから大豆の発見へ——ハプニングが次の探究を生みます。最終的には大豆→豆腐作り→豆腐屋さん見学へと、社会とのつながりまで探究が広がりました。

▲ いろいろな発見の記録をKitSのアプリ「チョキペタ」で表現。

ICT活用のポイントは3つ。
①撮る=視点が変わる。②残る=比較できる。③見せる=対話が生まれる。
ICTは探究のどこで使うかが重要で、デジタルとアナログを行き来しながら子どもたちの探究を支えていきました。


質疑応答(1時間19分10秒~)

Q:外に行くタイミングはどう見極めましたか?大人からの提案が強引にならないか不安です。

A:本物を見る前に子どもたちの想像を高めることを優先しました。活動が停滞したと感じたらデジタル機器が有効です。担任の先生と振り返りながら「次どんな提案をすれば子どもの発見が深まるか」を一緒に考えることが大切です。失敗を恐れず挑戦してください——その経験の積み重ねが探究の近道です。

Q:子どもの「なんで」がたくさん出た場合、テーマはどう絞ればいいですか?

A:絞ること自体を子どもたちと一緒に対話しながら決めてみてください。「どれについてみんなで考えてみよう?」と話し合う——それ自体が探究です。逃したことも記録に残しておけば、また別の機会につなげることができます

Q:タブレットは何人に何台用意していますか?

A:その活動が、1人1台で使うのか、順番で使うのか、あるいは協力して使うのかによって、必要な台数は変わってきます。
 導入園では、1クラスあたり4〜5台程度で運用しているケースが多いです。
また、1人1台で集中して使う場面があったとしても、それだけで完結するのではなく、プロジェクターやモニターを使ってみんなで共有する時間をつくることがとても大切です。


事例に出てきたアプリのご紹介

わくわくスコープ
タブレットと接続して最大倍率1000倍のミクロの世界を覗くことのできる本格的なポータブルWi-Fi顕微鏡です。目で見えないミクロの世界が楽しめます。
例えばピーマンを覗いてみると……?見たことのない模様がある!!そんな不思議な発見がいっぱいです。

ヒカリラボ
「見る」体験を深めるアプリです。iPadをかざすと身の回りの風景が万華鏡のように見える「まんげきょう」と写真や絵を周りの風景と重ね合わせて新しい世界をつくる「KASANE」の2つの機能を楽しむことができます。

チョキペタ
カメラで撮影した写真を好きな形に切り取ってコラージュ。作品を印刷すれば、オリジナルの折り紙や図鑑・絵本作りへと遊びを展開することも可能です。作品を模様にして、便箋、電車、ガーランド等のペーパークラフトに出力することもできます。

自園でも始めてみよう!

今回のセミナーを通じて、探究保育のエッセンスが見えてきたのではないでしょうか。難しく考えすぎる必要はありません。まずは子どもの小さな「なんで?」に立ち止まってみることから始めてみましょう。

ゴールを決めすぎない。子どもの問いを育てる。環境を意図的につくる。ICTは「どこで使うか」がポイント——これらを意識しながら、子どもたちとパートナーになって探究活動を楽しんでください!

最後に・・・

今回講師をしていただいたみりおらーれ代表の津田純佳氏も参加するカンファレンスHoikuHackの案内です。

「ICT」「園庭・保育環境」「マーケティング」「発達支援」「インクルーシブ教育」など幅広いテーマを横断しながら、参加者同士が出会い、語り合い、つながりを広げていく場です。明日からの保育につながるヒントを、ぜひ一緒に見つけていきましょう。様々な視点から保育を語るトークセッションや、ワークショップも多数ご用意しております。

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