セミナー

2025/12/9

〈セミナーレポート〉"デジタルで広がる探究の世界"

スマートエデュケーションの森本です。
2025年12月2日(火)に開催した「デジタルでひろがる探究の世界」セミナーのレポートをお届けします!

今回は探究をテーマに、主に3つのセクションで構成されました。まず宮城県仙台市向山こども園の木村先生と村松先生に豊かな探究の事例についてお話をいただき、次にスマートエデュケーションより他園の事例紹介、最後に質疑応答です。

↓セミナー動画はこちらからご覧いただけます。

※以下、当日のセミナーレポートです。

向山こども園の紹介(2分07秒~)

 向山こども園は、仙台市の駅から車で15分ほどの場所にある、広い敷地を持つ園です。園内には森や広場、動物たちの姿もあり、自然豊かな環境が広がっています。子ども主体の保育を大切にしており、泥だらけになって遊ぶような環境の中でも、タブレットを“道具のひとつ”として活用している点が特徴です。
 今回紹介する「虫」をテーマにした活動も、クラス全体で取り組んだものではなく、虫に興味を持った子どもたちが、4月から継続して進めてきた探究的な取り組みです。

向山こども園の村松先生より事例紹介:前半(5分32秒~)

虫との実体験と探究活動

はじめに4月の虫の探究活動をお話いただきました。

 年長児は森でカブトムシを探して遊んでいましたが見つからず、子どもたちは自分たちでバナナやリンゴを使った仕掛けづくりを始めました。それでも成果が出なかったため、「どうしてだろう?」という疑問が生まれたそうです。
 その後、デジタル顕微鏡で木を観察する中で樹液を発見し、「樹液があればカブトムシが来るのでは?」という仮説を立て、人工の樹液づくりへと遊びが発展しました。
 さらに、別の場所で大量の幼虫を見つけたことをきっかけに、子どもたちは「育て方を知りたい」と考えるようになり、図鑑やタブレットで飼育方法を調べながら、活動は“探す”から“育てる”へと深まっていきました。
 カブトムシが孵化した後は保育室にあふれるほどになり、子どもたちは「遊び場が必要だ」と気づき、木工を使って“遊びながら食べられるアスレチック”のような飼育環境をつくりました。
 この一連の活動を通して、子どもたちは自分で考え、試し、調べ、つくるという探究のプロセスを主体的に経験していったそうです。

虫がいなくなった後のICT活用

 夏休み明けも虫探しを続けていましたが、虫が見つからない日が増えたことで、子どもたちの関心は「今いる虫を大切に育てる」方向へ移っていきました。その中で「記録として残したい」という声が上がり、コラージュアプリを使ったオリジナル虫図鑑づくりが始まりました!
 文字が書けない子も参加できるように話し合った結果、「虫カードを作りたい」というアイデアが生まれ、写真を印刷してカード化する方法に発展。また、写真に音を入れられるアプリを使うことで、文字が書けない子どもも自分の声で説明を添えられるようになったようです。
 さらに寒くなって虫が見つからなくなると、一時的に遊びが途切れそうになりましたが、子どもたちは絵本や図鑑の写真を使って“オリジナルの虫”を作り始めました。コラージュアプリを使った切り貼りの技術も上達し、個性的な作品が次々と生まれたことで意欲が高まっていったそうです。
 その後も複数のアプリを組み合わせながら「世界に一つだけの虫」づくりを楽しむ姿が見られた、とお話くださいました。

アプリの具体的な使用方法とデモンストレーション(15分6秒〜)

  ここから向山こども園さんには、虫の探究で活用したアプリのデモンストレーションを行っていただきました。 

 「わくわくスコープ」

タブレットと接続して最大倍率1000倍のミクロの世界を覗くことのできる本格的なポータブルWi-Fi顕微鏡です。目で見えないミクロの世界が楽しめます。例えば手のひらを覗いてみると……?変な柄だ!毛もある!!そんな不思議な発見がいっぱいです。

「チョキペタ」

自分たちで撮影した写真を好きな形に切り取ってコラージュ。作品を印刷すれば、オリジナルの折り紙や図鑑・絵本作りへと遊びを展開することも可能です。作品を模様にして、便箋、電車、ガーランド等のペーパークラフトに出力することもできます。

  「おとえ」

身の回りのものをカメラで撮って、マイクで録音!触って遊べる、音の鳴る絵ができあがります。お店屋さんのレジやオリジナル楽器、しゃべる図鑑など様々な画面で活用できるアプリです。QRコードやURLを発行することができるので、他のクラスの子どもたち・保護者・地域の方などにも簡単に作品を共有することができます!

他園の探究活動事例の紹介(25分50秒~)

 続いてスマートエデュケーション大澤より、探究活動を進めていく上でのポイントや実践事例をテーマにお話をさせていただきました。
 乳幼児期において最も大切なのは“直接体験を通して何を感じるか”であり、探究活動ではまず「答えを出す」「正解に辿りつく」という姿勢を手放すことが重要です。
 そして素敵だと感じる園の探究活動には、共通する4つのポイントがあると言います。

ポイント①:子どもの興味関心が起点となること
探究活動は、子どもの心が動いた瞬間を起点にすることが大切です。子どもの興味関心から始まるからこそ、深まりが生まれます。

ポイント②:対話を通じて進めること
活動を保育者が一方的に進めるのではなく、子どもとの対話を重視して展開します。乳幼児期は五感を使った実体験が重要であり、知識を教え込むのではなく、問いかけや会話を通して、子どもが自ら考えるきっかけをつくることが大切です。

ポイント③:保育者が共同研究者として関わること
探究の主体は子どもですが、自由にしていれば自然と探究が進むわけではありません。保育者は共同研究者として、素材を用意したり、問いを投げかけたりしながら活動に関わります。さらに、仕掛けの一部としてデジタルを取り入れることで、新たな視点が生まれたり、新しい表現が広がったりし、探究がより深まることもあります。このデジタル活用については後ほど詳しく触れます。

ポイント④:答えが出なくても大丈夫という姿勢を持つこと
探究活動は常にうまく深まるとは限りません。盛り上がらずにすぐ終わってしまうこともあります。しかし、探究を上手に進めている園の先生方は、「どこに向かうかわからない状態」を焦らず楽しんでおり、この“わからない状態に耐える力”が探究において非常に重要です。

事例紹介

アリの巣の探究
千葉県のある園さんでの事例です。ある日、子どもたちが園庭でアリの巣を見つけました。子どもたちはアリが巣に出入りする様子を眺めたり、タブレットで写真を撮ったり、園庭を探検してほかのアリの巣を探したりしながら、「アリの巣マップ」を作り上げていきました。

 先生は、子どもたちが撮影した写真を印刷して掲示し、その下にマップを貼って壁面を構成しました。この掲示の“下の空白”が大きな仕掛けでした。子どもたちはそのスペースを見て「ここは土の中の世界だ」と想像を広げ、そこから廃材を使ったアリの巣づくりが始まったとのことです。

 段ボールで迷路のようなアリの巣が作られ、さらに ICT を取り入れた仕掛けも生まれました。段ボールの取っ手を引くと、土の中でアリが動く映像が見られるように工夫されていたのです。
 廃材とデジタルがどちらも表現の道具として自然に使われている点に、とても驚かされます。さらに、アリの巣の横には「アリのポスト」もつくられ、この遊びは子どもたちの想像力によってどんどん発展していきました。
 もし正解を求める調べ学習のように進めていたら、この豊かな発想は生まれなかっただろうと感じます。 子どもが問いを立て、予想し、素材を使って形にし、手を動かしながら考えていくプロセスがあるため、これも立派な探究です。実際にアリの探究は郵便局や町探検、蜂の巣などへ発展し、対話や制作を通して学びが深まっていました!

探究は大掛かりな取り組みでなくても、小さなサイクルで成立します。「どうしてだろう?」という興味を出発点に、予想・表現・記録を重ね、先生のドキュメンテーションや対話を通して新たな気づきが生まれ、環境設定によって遊びがさらに広がるとのことです。

探究活動のポイントになるのが「記録・表現」です。とくに発見したこと、感じたことを子ども自身が「自分の手で記録する」ことがとても大切です。

 子ども自身が記録をすることで、先生は子どもの視点や心の動きを知ることができ、子ども理解を深められます。また、その記録から、遊びが継続するような環境づくりのヒントを得ることもできます。

 こちらは東京都の園さんの事例です。『チョキペタ』というコラージュアプリを使い、子どもたちが野菜の成長記録やバッタの観察記録をつけています。

 特に右側のバッタの記録では、絵が得意な子は色鉛筆で絵を描き、デジタルで表現したい子はタブレットを使うなど、子どもたちが自分で道具を選べる環境が整えられている点も、とても素晴らしいと感じます。

 続いて福井県の園の事例です。園内にはさまざまな生き物がおり、このカタツムリのコーナーにはチョキペタで作られた子どもたちのオリジナル図鑑が置かれていました。

 図鑑には、「ベロはザラザラしている」といったように、子どもが自分で興味をもったポイントを写真と文字で記録していました。こうした記録が置かれていることで、次にここを訪れる子どもも “ベロってどうなっているんだろう?” と自然に注目し、カタツムリを見る視点が広がっていくのではないかと思います。

まさに、子どもから子どもへと探究の種が受け渡されていくようで、非常に印象的でした。

 つづいてデジタル顕微鏡を活用している様子です。左は向山こども園さん、右は福岡県の園さんです。福岡の園さんは観察して終わるのではなく、子供たちがその観察した記録をチョキペタを使って作っています。

 アプリを使うことで「穴がある」「トゲトゲ」「ザラザラ」など、子どもがどこに興味を持ったのか、どんな視点で観察しているのかを理解しやすくなります。また、iPad は園の中だけでなく、遠足やお散歩などの屋外活動でも活用でき、写真を撮ることが子どもたちの探究活動の第一歩になることが多いと感じています。

 声による記録
「おとえ」では、絵に声を録音して残すことができます。人前で発表することが苦手な子でも、声を吹き込むことで、その時の自分の思いや気づきを記録できます。今しかない声や語りを残せるのも、デジタルならではの良さです。ぜひQRコードを読みこみ、画面をタップしてみてください(消音モードはオフにしてください)

 最後に、ICT は正解を求めるためのインターネット検索だけでなく、新たな問いを生み出すための多様な活用方法があります。上手に取り入れることで、子どもたちの世界はさらに広がっていくのではないかと思います。

 探究活動は、ゴールにたどり着かなくても大丈夫です。気軽な気持ちで子どもたちと対話しながら、ぜひ楽しんで取り組んでいただければと思います。

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質疑応答(54分33秒~)

Q:ICTを遊びの中に導入するのはなかなか難しさが感じられます。その中でのきっかけの作り方、そしてクラスで何台iPadを使っているか、また使用時間に関して何か明確に決めていることはありますか?

A:iPadの台数に関しては29人に対して約4,5台あります。必要な時に必要な子どもたちが使っており、何個かの遊びが同時進行で行われているので、全く使わないで遊んでいる子供たちもいます。
 時間に関しては、時間で制限するというよりはその遊びの枠組みやもっといろんなことがやりたいなっていうふうに思えるように、遊びの発想だったりとかを拾いながらやっていきます。タブレットに対しても自分だけの世界になってしまうというようなことがあまり起こってないので、そこまでの制約をかけていないです。
 タブレットは、子どもたちの興味に合わせて自然に使っています。「タブレットを使おう」と先に決めるのではなく、その場に合ったアプリをそっと差し出すイメージです。そのためには、先生がアプリを知っておき、「この活動に使えそうだな」という引き出しを持っていることが大切です。大人が少し触ってみるだけでも、使い方のイメージが広がります。触らないままだときっかけが生まれにくいので、まずは試してみることが大事だと感じています。
 タブレットは、特別な道具というより、必要な時に自然と出すハサミのような存在です。園で導入した当初は、子どもたちにそのまま渡してみたところ、自由にいろいろなアプリを開いて遊びながら、自分たちなりの使い方を見つけていきました。

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 子どもの探究活動をより良いものにしていくには、大人がともに共同しながら正解のない、どこに向かうか分からない過程を楽しむことが大事だと思いました。デジタルとアナログ、子どもたちが自分で道具を選べる環境があるとより探究が進んでいくのではないかと思います。
 ぜひみなさんも子どもたちと探究活動を楽しんでみてください!

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