
『大ピンチずかん』シリーズが大ヒット中の人気絵本作家、鈴木のりたけさん。実はKitS(きっつ)のアプリ『つなげっと』は、鈴木のりたけさんと共に開発した教材なんです。
『つなげっと』がリリースされた2013年は、ちょうどスマートフォンやタブレットが普及し始めた頃。デジタルデバイスを使った新しい絵本を作りたい!という思いから、プロジェクトがスタートしました。リリース後、「『つなげっと』開発秘話」をテーマに鈴木のりたけさんとスマートエデュケーション代表 池谷の対談を実施。スマートエデュケーションのWebサイトに開発秘話を発表しました。
KitS導入園さんから「子どもたちは『つなげっと』が大好きなんです!」という言葉をたくさんいただくなかで、この『つなげっと』がどのような思いのもとで生まれたのかを、ぜひ多くの方にお伝えしたく、今回、当時の対談記事を再編集してお届けすることにしました。
この10年で子どもたちを取り巻くデジタル環境は大きく変化しましたが、のりたけさんの思いは今も変わらずとても大切なものだと感じます。また私たちも当時と変わらぬ思いで幼児教育・保育事業に取り組んでいます。
これを読めば、保育のなかでより愛着を持って子どもたちにアプリを提案できるかも!?
『つなげっと』の誕生秘話、ぜひご覧ください!!
「つなげっと」の簡単なご紹介
つなげっとは、「まち」「ショッピングモール」「さとやま」などのマップの中で「困っている人・生き物」と「助けてくれる人・生き物・もの」をつなげて、いろいろな問題を解決するアプリです。
お友達と協力して楽しみながら、身の回りのできごとや社会のつながりについて考えるきっかけを作ることができます。
それでは、鈴木のりたけさんと池谷の対談記事をどうぞ!
(初掲載日:2013年2月18日)
のりたけさんの絵本との出会いが、起業の大きなきっかけ
ー 人気絵本作家 鈴木のりたけさんと一緒にアプリを開発することになった経緯について、教えてください。
池谷:実は私が起業しようと決意した大きなきっかけは、のりたけさんの絵本との出会いにあるんです。当時、まだぼんやりとですが「未就学児向けの知育というテーマで起業したいな」という思いがあり、ある日、勉強がてら本屋の絵本コーナーに足を運びました。
恥ずかしながら、それまでは自分の子どもに絵本を読み聞かせるということをあまりしたことがなかったので「絵本なんてどうせ定番ものしかないんだろうな」とちょっと高をくくっていたんです。ふとのりたけさんの『しごとば』が目に入って、何気なくページをめくったらとても面白くて。「知らない間に絵本はこんなに進化していたのか!」と驚いてしまいました。しかも作者プロフィールを見たら、なんと自分と同い年。厳しいはずの出版業界で新しいチャレンジをしている人がいるということに感銘を受け、早速買って帰りました。
『しごとば』の面白いところは良い意味で不親切というか(笑)。いろいろな職業の専門用語がそのまま出てくるので、子どもと一緒に読んでいるとその都度質問されるんですよね。親子が一緒になって「なんだろうね?」と会話できる雰囲気が自然と生まれることが素晴らしいと思いました。しかもよく考えてみたら、人生において難しいことや知らないことに出会うのは当たり前のことですよね。そういう「わからない」ことを絵本で体験できるのはとてもリアルでいいな、と思いました。「今まで出会ったことのないこんな絵本を作るのは、一体どんな人なのか」「自分も『しごとば』のようなサービスを作りたい!」といてもたってもいられず。その日のうちにネットで情報を検索して「会いたいです」とメールしました(笑)。

鈴木:池谷さんとは初めてお会いした時からとても盛り上がりましたね(笑)。教育に対する想いにも共感する部分が非常に大きかったですし、いつか一緒に仕事ができたらいいな、と思いました。
実際にアプリ開発に至ったきっかけは、スマートデバイス向けの絵本がとても新しい分野なので、純粋に「やってみたい」という好奇心があったのと、池谷さんが「どのような形でアウトプットすると、より多くの人に継続的に楽しんでもらえるか」ということを、非常に戦略的に考えていらっしゃったからです。単純に「絵本をアプリ化する」のではないというところに魅力を感じ、スマートエデュケーションさんとだったら、良い作品を作ることができるのではないかと思いました。
池谷:まだまだ業界黎明期のこのタイミングで、のりたけさんのような人気作家さんが当社のために作品を作ってくれると言って下さったときは、本当に光栄でうれしかったですね。
一人ひとりの人物や、人と人との関係には、さまざまな「ドラマ」があるということを伝えたい
ー『つなげっと』のコンセプトはどのようにして生まれたのでしょうか?
鈴木:制作にあたっては、まず「絵本がタブレットで提供される意味はどこにあるのか」「自分だったらスマートフォンやタブレットで何がしたいだろうか」ということを一番に考えました。絵の力を使って楽しませるのが僕の本業なので、まずはそれを武器にしないといけないな、と。そこで、1枚の大きな絵のなかをぐるーっと見回しながら巡ることができたら、すごく面白いんじゃないかと思ったんです。
「まち」や「ショッピングモール」といった絵のなかの社会で関連のある組み合わせを見つけるというのは、社会性もあるし、みんなで楽しむことができるのではないかと思いました。最初から子どもに社会学習をさせようと思って考えたわけではありません。「楽しんでいるうちに勉強になっちゃった」というものを作りたいなと思い、アイデアを集約させていきました。
池谷:ある日、のりたけさんが1枚の大きなラフ画と何枚かの手書きのカード、そしてダンボールで作ったiPadの枠を持ってきて、「こういうことがやりたいんだよ」と『つなげっと』の実演をしてくれました。一発でイメージが湧いて「これでいこう!」と即決しました。最初の段階から素晴らしい完成度だったので、「さすがだな」と思いました。ほぼ100%のりたけさんの力で生まれた作品です。
ー のりたけさんが今回の作品づくりでこだわったのはどんなところですか?
鈴木:スマートフォンやタブレットはデジタルの世界なので、あえてアナログ感を大事にしようと思いました。また、画面を見た時にまるで広い世界を見回しているようなダイナミズムを感じられるような絵にしたいな、と思いました。
池谷:地図はもちろん、カードの文言一つひとつまで丁寧に作ってくださっていて、すべて見てみたくなるような作り方をされているところが素晴らしいと思いました。のりたけさんはとても研究熱心ですし、同じものづくりをする人間として見習いたいところが沢山あります。
鈴木: 作品づくりを進めるにつれて思ったのは、このアプリを楽しくする要素は、地図よりもカードの面白さにあるのではないかということです。「カードがたくさん出てきて、にぎやかだね」というところで終わらず、一人ひとりの登場人物を魅力的に見せることが何よりも大切だと思い、1枚1枚時間をかけて作成しました。
現実の世界でも、街を歩いていると周りは知らない人ばかりですが、友達になればその人なりの魅力や面白さを絶対に発見できると思うんですよね。そういうことを大事にしないと、結局人に共感する心も生まれないような気がしていて、「『一人ひとりの人物』や『人と人の関係性』には色々なドラマがあるんだよ」ということを、しっかりと伝えていきたいと思いました。
ー 地図に出てくるお店の名前もダジャレ満載で楽しいですよね。ついつい夢中になって絵を眺めてしまいます。

鈴木:絵の中に目を止められる要素がたくさんあればあるほど、絵の世界に入りこんでいけると思うんです。本編とは関係ないところの面白さは、紙の絵本を作るときにも大切にしています。 子どもたちからもよく同じような感想をもらうのですが、こういう面白さは絶対に必要だと感じています。
池谷:僕が感動したのは、のりたけさんが「『つなげっと』をクリアした後のおまけを作ろう!」とおっしゃったんです。ただでさえ作画数が多くて大変なはずなのに、クリアした後でもじっくり楽しめる仕掛けを作りたい、という想いに感銘を受けました。
おまけでは敢えてゴールのない問いかけをしています。目的を達成して終わりではなく、絵そのものを心ゆくまで眺めて楽しんでほしいという想いが込められています。
『つなげっと』を起動するたびにおまけは変化するので、是非最後までプレイして、おまけの部分も味わって頂きたいですね。
ー のりたけさんがこれだけの想いをこめて作った作品を支える立場として、池谷さんがこだわったのはどんなところですか?
池谷:まずはのりたけさんの作品のアナログ感や温かさを引き立てるにはどうしたらいいだろう、ということを考えました。そこで考えたのが、アプリ内の音をすべて生音にすることです。ボタンの音もギターの生演奏の音なんです。音楽制作を担当頂いた方には「こんなこと初めてだ」とびっくりされてしまいましたが(笑)。
作品の温かさを大事にする一方で、地図上のキャラクターの配置などについては、すべてプログラムを組んで、効率的に作品が作れるようなシステムを構築しました。しっかりとした制作エンジンを提供することで少しでも工数を減らすことができれば、のりたけさんがライフワークとして長く作品を提供してくださるかなと思って(笑)。
鈴木:アナログ感満載の『つなげっと』は実は非常にシステマティックな仕組みで作られているんですよね。制作工程ひとつとっても、本当に色々なアイデアとか技術が詰めこまれているので、私も勉強になります。
のりたけさんと一緒にものづくりができたことが、うれしい。
ー スマートエデュケーションにとって『つなげっと』は特別な思い入れのあるアプリですよね。
池谷:そうですね。まずは私自身が大きな影響を受けたのりたけさんと一緒にものづくりができたことが、とてもうれしいです。
鈴木:私にとっても今回の挑戦は、とても大きな意味を持っています。私が絵本作家になりたいと思った根底には「絵の力でコミュニケーションしたい」という想いがあったのですが、いつからか絵本の既成概念や絵本らしさにとらわれてしまっているような気がしていました。
今回初めてスマートデバイス向けの作品を作ってみて、改めて「子どもたちを『絵の力』『絵の魅力』にひきつけたい」という自分の絵本作家としての原点に立ち帰ることができた気がしました。そして「そこから外れなければどんなことだってやってみよう」「好奇心をもってやることが自分の原動力なんだ」ということを改めて確認できました。今後、紙の絵本を作る上でも新しい取り組みができるのではないかと感じています。
『つなげっと』を作っている間にも新しいアプリがどんどん出てきて、「なるほど、こういうやり方もあったのか」と思うことが度々ありました。スマートフォンやタブレットの世界は本当にスピードが速くて、みんながマーケットに次々と新しいアイデアをぶつけて来るので、とてもスリリングな業界だと感じています。自分自身を盛り上げていくにはとても良いフィールドなので、また何か面白いことができたらいいな、と思っています。
池谷:のりたけさんは本当にいろいろなアイデアをお持ちの方なので、また一緒に新しいことに挑戦できたら、うれしいですね。
鈴木:今は情報があふれすぎていて、表層的なところだけを見てすべてを知ったような気になってしまうことが多々あると思います。絵本はひとつのテーマを深く掘り下げた厚みで勝負できる数少ない媒体です。世の中のことを自分自身の力でどんどん掘り下げていくと、面白いことをたくさん発見できるんです。自分で納得いくまで突き詰められることが、自分にとっての絵本づくりの最大の魅力だと感じています。これからも絵の力とテーマの面白さの両方をもつ楽しい作品を提供していきたいと思っていますので、是非楽しみにしていてください!
いかがでしたでしょうか?
「世の中のことを自分自身の力でどんどん掘り下げていくと、面白いことをたくさん発見できる」というのりたけさんの言葉が、改めて深く印象に残ります。
本や図鑑、インターネットから得た知識だけではなく、子どもたちが日々の生活の中で、自分の頭と心を使って面白いことを見つけ、掘り下げていくことが大切であり、それが小学校以降の学びに向かう力の土台になるのではないかと感じます。
ぜひ「実体験」を豊にするための道具として、ICTも、そして『つなげっと』も上手に使っていただけたらと思います!






