コラム

2026/10/18

石ころが宝石に変わった瞬間ーー「わくわくスコープ」がひらいた新しい世界と先生方の初めての学会発表【前編】

8月20日・21日に京都で行われた幼児教育実践学会にて、学校法人隆松学園 小鳩幼稚園 (福井県福井市)さんがポスター発表を行いました!テーマは「石ころが宝石に変わった瞬間〜ICTによる『五感の拡張』がおよぼす遊びの深化〜」。
 ICTがあることで子どもたちの遊びがどんな風に広がったり深まったりしたのか。また、先生方は初めての学会発表でどんなことを感じたのか。年長クラス担任の和田先生、主任教諭の吉田先生、年中クラス担任の橿尾先生にお話を伺いました!


「この石も宝石なのかな?」

ーー子どもたちが石に興味を持ち始めたきっかけについて、教えてください。

和田先生:今の年長組の子どもたちと石との出会いは昨年に遡ります。誕生石の話をきっかけに宝石に興味を持ち、「園庭にも宝石があるかもしれない!」と、石探しを始めました。園庭の砂場には、白っぽい石や茶色っぽい石、少し透明感のある石など、よく見るとさまざまな色や形の小石が混じっています。本当に小さな石なのですが「宝石みたい!」と言って、みんな喜んで拾ってきました。

子どもたちがいろいろな色や形の石をたくさん拾ってきたので、オリジナルの名前をつけて、ペットボトルのキャップに載せたり、透明なケースに入れたりして展示することにしました。こうして保育室に、子どもたちの宝石コレクションコーナーが生まれました。

そのほか、石に関する絵本や図鑑を置いたり、大きさや重さの違いに気づいた子どもたちのためにはかりを用意したりと、子どもたちの興味に合わせて環境を整えていきました。

ーー子どもたちの探究心を刺激する環境設定が素晴らしいですね!このときの興味が年長まで続いていったのでしょうか?

和田先生:実は冬になって、石探しへの熱は一旦冷めたんです。ただ、展示は片付けずに、新年度になってそのまま年長の部屋に持って行きました。

ーー子どもたちの興味が冷めても環境を残しておいたのは、なぜですか?

和田先生:子どもたちを見ていると、一度興味が離れても、何かのきっかけでまた夢中になることがあるんです。以前楽しんだことは、子どもたちの中にちゃんと残っているんですよね。別の遊びをしているときに「そういえば、あんなことした!」と思い出して、過去の経験と今の興味がつながり、思いがけない展開が生まれることもあります。なので、しばらく遊ばなくなっても、子どもたち自身が「片付けたい」と言うまでは、なるべくそのまま残しておくようにしています。

ーーその言葉どおり、年長組になって、石の探究が再び動き始めるんですね。

和田先生:きっかけは、母の日のプレゼント制作でした。紙粘土にビーズなどを飾る活動の中で「お母さんが喜ぶ宝石を、園庭で一つ探してこよう!」ということになりました。そこから石への興味が再燃し始めたんです。

「スコープで見たらどうなる?」子どもの発想が、新しい世界への扉を開く

ーーKitSを導入されたのも、ちょうどこの頃でしたよね。

和田先生:はい。ICTを取り入れることには前向きだったのですが、子どもたちが主体的に遊ぶなかで、どんなタイミングで、どんなふうにICTを取り入れればいいのか、不安や迷いがありました。でも、まずは使ってみないとわからないですよね。そこで、一度子どもたちと一緒に「わくわくスコープ」を使ってみたんです。身近なものを観察しながら、「こんなことができる道具があるんだよ」と紹介しました。そのときは「面白いね!」で終わったのですが、数日後、石を拾っていた子が「スコープで石を見たらどうなるんだろう?」と言い出したんです(笑)。

ーーすごい!「ちょっと遊んでみよう」という経験がすごく大切だったということですね!石を見たときの子どもたちの反応は、いかがでしたか ?

和田先生:たくさんの小さな石のなかに、キラキラの石を見つけたんです!本当に宝石みたいに輝いていて、私も感動してしまいました。後日、宝石がたくさん載っている宝石買取のチラシを持ってきてみると、子どもたちはものすごく真剣に「この石はこの宝石なんじゃないか!」と見比べていて。見慣れた石が、スコープで見ると実はキラキラ輝いていることを知って、みんな夢中になっていました。

「もっと見たい!」から「比べたい、試したい」へ

ーーここから遊びはどのように展開していったんですか?

和田先生:一人の子が「洗うともっとキラキラするんじゃない?」と言って、石を洗い始めました。その発見を周りの子どもたちにも伝えると、「やってみたい!」と興味を持つ子が増えました。石を探して、洗って、肉眼でじっくり見たり、「わくわくスコープ」で拡大したり。何度も繰り返すうちに、子どもたちは石の小さな違いにも目を向けるようになりました。
さらに、一人の子が「この写真を飾っておきたい」と言い出したことから、「わくわくスコープ」で撮影した画像を印刷し、その横に実物の石を貼って展示するようになりました。

その展示を見たお友達も、「こんな石を探してみたい」「この石はどんなふうに見えるかな?」と興味を持ち始めました。似た石を比べたり、拡大したときの姿を予想したり。最初はそれほど関心を示していなかった子どもも、お友達の発見をきっかけに石探しに加わるようになりました。

ーー「わくわくスコープ」を使っていなかったら、この石の探究はどのように展開していたと思いますか ?

和田先生:年中のときには絵本や図鑑で調べたり、重さを測ったり、色や形を見比べたりと、いろいろな方法で石を楽しんできました。なので、もしかしたら「もう十分」と遊びはそこで終わっていたかもしれません。ところが「わくわくスコープ」を使ったことで、まさに「人間の限界を超えた!」という感じがありました。肉眼では同じような色に見える石も、拡大するとまったく違って見えます。まだら模様の石は、白い部分がキラキラと輝いて、本当に美しいんです。
「わくわくスコープ」を使うまでは、子どもたちは石を見ると「宝石みたいだね」と言っていたのですが、今は本当に「宝石」だと思っています。園庭に出ても石ばっかり見ているんです(笑)。石を見る目も育っていて、「この石はスコープで見ると、こんな風に見えるかもしれない!」「この石はこの宝石に似ているかも!」などと話しながら遊んでいます。
遊びはほかの学年にも広がって、最近は年少さんも「宝石見つけた!」と私に見せに来るんです。私はすっかり宝石担当です(笑)。なので、もし「わくわくスコープ」がなかったら、石は石のまま。宝石にはならなかったんじゃないかな、と思います。

(後編へ続く) 


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