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「KitS」に取り組む幼稚園
聖愛幼稚園(東京都福生市)

「創造力」と「チームワーク力」、「IT活用力」を育てるというKitSのコンセプトに共感したこと、KitSでは「ITを使うからこそ実現できる」新しい体験ができると思ったことが導入の大きな理由。

–これまでも園での活動にPCやタブレットを取り入れられてきたとのことですが、どのような取り組みをされてきたのでしょうか。

当園では「教育」というよりは、「遊具」の一つとしてPCやiPadを導入してきました。単純に自分自身が「面白い!」と思ったものを、「子どもたちにも体験してもらえたら嬉しい」、という気持ちで取り入れました。

最初にMacを置いたのは15年ほど前でしょうか。それが一昨年くらいからiPadに置き換わっています。iPadは積み木やほかのおもちゃと同じような位置づけで、「自由あそび」の時間に子どもたちが好きに触れられるように、共有スペースに置いています。

教育的な取り組みというよりは、遊びの選択肢の一つとしてITを用意しているという程度ですので、特別なカリキュラムを組んだりはしていません。

–PCやiPadに対するお子様達の反応はいかがでしたか?

子ども達は抵抗なく、親しみをもって遊んでくれていると思います。お友達と一緒に遊ぶことでコミュニケーションが生まれたり、ちゃんと順番を待つ姿が見られたりなど、色々なことを学んでいる様子です。

「いつでも自由に遊べる」という環境が逆に良かったのか、PCやタブレットに固執して、他の活動に支障が出てしまうということもありませんでした。

PCやタブレットを媒介として子ども達のコミュニケーションが活発になり、みんなが楽しんでくれたらいいな、という思いで取り入れたので、期待通りの反応をしてくれたと思っています。

–今回、KitSプロジェクトに参画しようと思われた理由について教えてください。

恐らく今の子ども達が大人になる頃には、今の大人以上にITが必要不可欠なものになっていくと思います。「ITに親しみをもってほしい」という思いもあり、「遊具」の一つとしてiPadを導入してきましたが、このKitSプロジェクトに参画することによって、一歩踏み込んだ形で一斉保育の場にiPadを導入することになります。

タブレットを使用した幼児教育で最も重要なことは、「子ども」と「タブレット」の関係を作るのではなく、タブレットを媒介として「子ども」と「子ども」の関係を作ることにあると思います。ですから参画を決めるにあたっては、タブレットを使う意味、タブレットだからこそできる体験はどんなものなのか、タブレットを使うからこそ伸びていく子ども達の能力はどんなものなのかについて、とことん突き詰めて考えました。その上で、今回挑戦してみようと思ったのには3つの理由があります。

まず1つは、「創造力」と「チームワーク力」、「IT活用力」を育てるというKitSのコンセプトに共感したこと、そしてKitSでは「ITを使うからこそ実現できる」体験ができると思ったことです。

「創造力」、「チームワーク力」については、最近、保育の現場でも重点的に育てていく必要性を感じていました。この2つの能力を育てていく活動には色々なものがあるかと思いますが、その選択肢の一つとしてITを使った活動も良いのではないかと思いました。
ただ、先程もお話したように、ITは「ただ取り入れれば良い」というのではなく、「それを使うことでどんな体験ができるのか」が重要です。今回KitSプログラムで使用する「Goccoらくがキッズ」「みんなで つなげっと」、子ども達が1人で自由に遊ぶのではなく、カリキュラムに従ってクラス活動に取り入れてこそ意味のあるアプリだと感じています。
創造力プログラムで使用する「Goccoらくがキッズ」には、子ども達の発想力や表現力を刺激するだけではなく、一人ひとりの作品を友達に褒めてもらえたり、友達の発想から学んだりできる仕掛けがちりばめられています。子どもの創造力を引き出し、自己肯定感をつけるという意味で、非常に工夫されたツールであり、従来のお絵かきや工作ではできない体験をすることができます。
また、チームワークプログラムで使用する「みんなで つなげっと」は、絵本作家さんが作られた作品ですが、紙の絵本の読み聞かせでは体験できないチームワークや問題解決力が育つアプリです。もしKitSで使用するアプリが「お手本や正解を目指して取り組む」というものであれば、KitSを導入することはなかったと思います。プログラムの内容を吟味した結果、KitSでないと引き出せない体験がある、これまで見られなかった子ども達の楽しい表情や真剣な姿を見ることができると感じられたので、園の活動に取り入れる価値が十分にあると思いました。

その子にしかできない発想や個性を引き出しながら、一人ひとりの自信につなげていきたい。

2つ目は、子ども達が保育者と一緒にITの使い方や楽しみ方を学ぶことで、子ども達のなかにどのような変化や育ちが起こるのかを、責任をもって見てみたいと思ったことです。

これまでは、子ども達にPCやiPadを自由に使ってもらっていました。子ども達がPCやタブレットというものの存在を知ったり、楽しんだり、という意味では、効果はあったと思います。一方で、ITを使った遊びを子ども達の自由な意思に任せるのではなく、保育者がコントロールすることで、もっと子どもの成長にコミットしていくべきではないか、という思いも生まれてきました。これまでの遊び方と比べて、どのような変化が起こるのかを是非見てみたいと思っています。

そして3つ目は、幼稚園の新しい教育の柱を育てたいと思ったことです。

子ども達を取り巻く保育、教育環境が激変する中で、私立幼稚園も自分たちの役割がどこにあるのかということを、常に考えていかなくてはいけません。園ごとの教育方針をもって教育できるのが私立幼稚園の一番の良さですが、「聖愛幼稚園だからこそできる教育」というものも、時代に合わせて進化させていく必要があります。この取り組みによって、子ども達が心から楽しんでくれて、子ども達のなかにある能力を上手く引き伸ばすことができたら、聖愛の新しい柱になるかもしれないな、という期待を持っています。今回は私自身が授業を行うのですが、日頃から「保育がマンネリにならないように工夫しましょう」と先生方に声をかけている手前、園長自らが新しいことに挑戦して、みんなに応援してもらえたら嬉しいな、という気持ちもあります(笑)。

–今回は園長先生が自ら授業に立たれるということですが、どんな活動にしていきたいと思っていますか?

「創造力」や「チームワーク力」、「IT活用力」を育てることはもちろんですが、子ども達が自分に自信をもてるような活動にしていきたいと思っています。どんな子どもにも、その子どもにしかできない発想があると思います。今回のプログラムは、十人十色の個性を引き出すチャンスが沢山あるので、その良さを活かし、先生はもちろん周りのお友達からも認めてもらうことで、一人ひとりの自己肯定感につながっていくといいな、と思います。

自分自身の思いとしては、園長が教室に立つという機会はほとんどないので、子ども達の様子を直接知ることができるというのはとても嬉しいですし、自分にとっても大きなプラスになると思います。今まで見ることのできなかった子ども達の表情や行動を是非見てみたいので、みんなが「園長先生と遊べる時間だ!」と楽しみにしてくれるよう、私自身も個性を活かして、色々なネタを用意したいですね。

–今回のプログラムを通して、お子様たちに期待することについて教えて下さい。

今年度は特に「人のために何かをしたい」という思いのある子どもを育てたいという考えを強く持っています。自分のことはさておき、困っている人がいたら助けてあげたい、という愛の精神を育んでいきたいと思います。
「KitS」プログラムに限ってのことではありませんが、クラスの活動のなかでわからない友達がいたら助けてあげる、先生に伝えに行ってあげる、机をふいてあげる、そういう優しさも伸ばしていけたらいいですね。最初は困っている友達に気がつかないかもしれませんし、先生に言われて嫌々やってあげることもあるかもしれませんが、「ありがとう」と言われる気持ちよさ、「お互いに助けあえば、心があたたまるんだ」という価値観が子どもたちに生まれるといいですね。

「創造力」や「チームワーク力」を伸ばす活動は、みずみずしい感性をもつ幼児期に取り入れてこそ意味のあるもの。

–今回の試みについて、保護者の皆様にはどのようなことをお伝えしたいと思われていますか?

このプログラムを導入する背景には、「創造力」、「チームワーク力」を伸ばす体験をさせたいという思いがあることを、まずご理解頂けると嬉しいです。

KitSを導入する年長クラスでは、これまでは文字数字の学習に取り組んできました。もちろん、学力の向上も大事なことですし、KitSを導入するからといって、文字数字の学習がなくなるわけではありません。ただ、「創造力」や「チームワーク力」を伸ばす活動は、みずみずしい感性をもつ幼児期に取り入れてこそ意味のあるものだと思います。

「創造力」や「チームワーク力」は多様な活動のなかで育っていくものであり、全てをKitSに任せるというわけではありませんが、KitSならではの様々な活動のなかで、「友達と一緒に協力しながら、また、時にはぶつかりながら問題を乗り越えた」、「諦めずに作品を完成させることで、みんなから褒めてもらえた」というような成功体験の芽生えのようなものを味わってもらいたいと思っています。

初めての取り組みでもありますし、面白い活動が沢山ありますので、写真、ビデオ、参観などで是非保護者の皆様に子ども達の様子を見て頂けるようにしたいと考えています。

–担任の先生方への想いについて教えて下さい。

新しいプログラムを導入するというのは、先生方にとってはとても負担が大きいものですが、今回の取り組みについてお話をした時、皆さんポジティブな気持ちで受け入れて下さったので、とても有難く、そして心強く思っています。

今回は私がメインで授業を行いますが、子ども達の様子を一番理解しているのも、子ども達の心を一番強く捉えることができるのも担任の先生方です。先生方の支えや協力なしではとても実施することはできません。是非一緒に子ども達の様子や変化を観察してもらって、良きアドバイスをもらえたら、と思っています。もしかしたら、日頃スマートフォンやタブレットに親しんでいる若い先生方の方が、面白いアイディアが思いつくかもしれませんね。

–貴園の「幼児教育×IT」に関する今後のビジョンについて教えて下さい。

「まずは今回のプログラムをやってみてから」というのが正直な気持ちです。今回は東京大学の山内先生など、研究者の方々の検証、評価を頂ける場もありますので、色々な角度からの振り返りをしっかりとして、今後に繋げていくことができたらいいな、と思います。
ITの未来はとても予想することはできませんが、新しいテクノロジーが生まれたら、教育も新しくなっていくと思います。新しい発明や技術が登場した時に、「保育に取り入れたら面白いだろうか」、「どうしたら保育に活かせるか」という視点だけは常に持っていたいと思っています。

 
学校法人聖愛学園 聖愛幼稚園園長 
野口哲也氏
早稲田大学教育学部卒。2000年代から園児活動の一部にパソコンを取り入れ、現在はiPadを導入。幼稚園団体でIT活用の講師を務めているほか、園でのiPad活用ぶりが新聞や雑誌で紹介される。
http://www.seiai.ac.jp/

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