- KitS blog
愛知県 守山幼稚園
愛知県名古屋市にある守山幼稚園を訪問しました。
「最近、園の行事を全てやめたんです」
園長の児玉先生は以前から幼稚園の行事中心の保育(先生や親中心の保育)に疑問を持たれており、改革を進めていた事は知っていましたが、
ついにここまで来たか。
そんな想いを胸に園を訪問しました。
この画像は私のスマホのスクリーンショットです。TikTokに守山幼稚園の先生がアップした動画です。37万回再生されています。
フォロワーも6.3万人。。そんな沢山の保護者がいるわけがありません。
児玉先生にたずねました。
「コロナで登園自粛をお願いしていた時に、先生がやってくれました。」
「やって良いか相談はありましたが、反対する理由はないですし、園の保育の考え方は先生が理解しているので内容はお任せです。僕も出ていますが、先生に誘われて参加しただけです。」
この活動は日本子ども学会のチャイルドサイエンス誌で紹介されました。
「うちの園も、一昔前は行事に追われている園でした。先生は行事に追われ、基本的に去年と同じ事をやる。
調べてみると、こういった行事を保育に取り入れているのは日本くらいで、幼稚園教育要領にも定義されていないないんです。
勉強すればするほど疑問を持つようになりました。運動会や体育だって、富国強兵を謳った明治時代の国策から誕生したものです。
子ども主体の保育を実践しようとすればるほど、行事ありきの保育に疑問が生まれ、改革を決めました。」
子ども主体の保育を実践するためには、先生に変わってもらうしかありません。そこで先生たちと対話を始めました。
そうすると、先生方から(行事がないなら)こういう事をやってみたい。ああいう事をやってみたいという話が沢山聞けるようになりました。
「それやってみようよ!」ここから守山幼稚園の改革は始まります。
先生の発想を広げるために、児玉先生が各地で出会ったユニークな取り組むをする人を園に講師として招き研修会を開いたり(私もその1人だと思います)、先生方が希望した研修や留学も応援しています。
「先生方が変化し、園の雰囲気も大分良くなってきたので、9月に保護者に私から手紙を出しました。内容は、行事をやめることです。」
保護者からは、「楽しみにしていたのに残念」「私が通っていたときは楽しかった思い出があるのになぜやめるのか」こんな苦情が早速寄せられました。
「行事をやめるとは、年間行事として保護者に時期や内容をお約束はしないという意味であり、子どもと先生の相談の結果、実施される事はあります。保護者に見て頂きたい内容は、案内をして見に来て頂きます。オンライン(SNSや動画)でも見られるようにするので、保護者が子どもの育ちを見る機会はむしろ増えるのかもしれません。」
真相を探るべく、担任の先生に私から質問をしました。
するとこんな感想が帰ってきました。
「行事をなくす手紙にはさすがに私たちもビックリしました。でも、運動会はやりましたよ。クラス単位や学年単位で子どもに内容も決めてもらいました。綱引きなんて、子ども達のリクエストに応えるうちに最終的に5回もやりました。あのクラスに負けたからリベンジしたい!挑戦状を隣のクラスに出しに行きました。こんな事去年まではできませんでした。」
目的化してしまった行事を手段に変える、原点回帰です。
こちらは私の研修中の様子です。「きっつ」の新しい教材「おとねんど」を紹介しました。
先生から
「これ早速やってみたいです。ちょうど子ども達が音に興味を持っているので、試してみます。」
数年前の研修では出なかった言葉です。
先生がやりたい保育をするという事は、先生が勝手に保育をする事ではありません。
先生が子どもの育ちに寄り添いながら、適切に”提案”をする保育です。
それを実現するためには、明日の予定は基本的に未定(子どもと先生次第)が正しいはずです。
こういった話をすると、子どもの好きな事だけをさせるイメージを持たれるかもしれませんが、それは違います。
先生が子どもの育ちに併せて適切な保育設定を行い、子どもが自然に選べるように努めています。
この写真は児玉先生と保護者が話す様子です。私の訪問中にも数人が訪れ、園長に気軽に相談していました。
私が児玉先生に出会ったのは5年前。その頃は園児数が減少傾向でした。児玉先生は減少しても改革をやめない覚悟がありました。
いつもにこやかで元気な先生ですが、辛い事も沢山あったはずです。
去年、今年と園児募集の状況を伺っていると、一転増加傾向です。また職員採用も順調です。
さぞかし立派なホームページがあると思うかもしれませんが、実はホームページはありません。
口コミやTikTokやインスタグラムを見て感心を持った方が守山幼稚園を検索するとやがてyoutubeの動画にたどり着きます。
行事をやめ、ホームページがなくても園児は増え、職員も採用できる。
物事の本質を見極める力、自分の考えを持ち邁進する力が大切な事を改めて学びました。